第3話 再会
伶は一途に人を好きになる。好きになったらその人だけ。一目惚れはない。なにせ、人見知りが激しい。伶が人を好きになるという事は、伶の中ではとてもとても大きな決断をするという事。常に恋をしていなくても平気だけど、恋をし始めたら全力投球に近い力を必要としている。
この物語の案内人・柊は、そんな伶の性格は嫌いではない。不器用な人間は嫌いではないから。けれど、世の中の視点で伶を見ると、
最初は想って尽くすのが可愛い、でも後々それが重い。と思われがちな性格かもしれない。人間は日々新鮮さや刺激を求めている。
ところが伶は、平穏と変わらぬ絆を欲する所がある。
その点では新鮮さや刺激を求める人と付き合って行く事は、どこかしら難しいのかもしれない。
そんな伶が約一年前にある人と再会した。
伶が勤める店のお客様で、敦司という。
周りからはあっちゃんと呼ばれている。
伶より少し歳上だけれど四十代の同世代の男性だ。
怜と敦司は既に出会ってはいた。
伶の勤める店はA店・B店と二店舗ある。
伶は現在、B店舗に所属している。
所属店舗によっては、顔を合わせる事がないお客様も多い。敦司も伶にとって、顔を合わせる頻度が少ない、そんなお客の一人だった。
伶の始まりは約六年前、A店からだった。
そのA店舗で敦司と初めて会った。
当時、敦司には担当と言われ、お席に着く女の子がいた。当時、敦司の担当の女の子は三十歳手前の女の子。
指名制度はないけれど、それなりのお客様には一人、担当の女の子を決めていた。
敦司は仕事関係の集まり時にしか来ない。
月に一度程度かもしれない。いらっしゃいませ。こんばんわ。そんな言葉を交わすだけで、会話をする事はなかった。
この数年、伶はA店とB店を移動しながら、現在はB店に落ち着いている。
B店に関して、一番把握しているのも伶かもしれない。
そんな日々の中、二年前、B店で敦司と再会した。敦司は普段、B店に来店する事はなかったけれど、敦司の会社の周年記念という名目で、そのお祝いをB店でする事になっていた。
敦司はそれなりの立場の人間だ。
従業員や関係業者の対応に、祝い酒を持って、色々な店に挨拶回りをしていた。
その時もやっぱり、いらっしゃいませ。こんばんは。慌ただしく走り回る敦司と会話をするのは困難。B店に留まる時間もほとんどなく、終わっていた。それからも敦司が現れるのはA店。ある集まりの時にいるけれど、その集まりは若い女の子が好きな人達が多い。
B店の若い女の子達がヘルプでA店に行く。
敦司にはA店に担当の女の子がいる。伶が敦司との接点を持つことはない状況だった。
当時の伶は、敦司に対して、恋愛感情は全くない。でも嫌いなタイプではなく、それなりに身支度が素敵な人。という印象で、記憶に残る存在ではあった。話せるなら話したいけど機会もないしな……仕方ないね、と思うことにしていた。
そんな中、一年前にある出来事があった。
それが伶と敦司の再会と言える事柄かもしれない。
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