第50話 昇級
「アンスガーさん、アンスガーさん。」
どこか遠い世界へ思考が飛んでいるアンスガーさんを、現実に引き戻すため呼びかける。呼びかけるだけでは無反応だったので、肩を強く揺さぶる。そうして、やっと現実世界に意識が戻ってきたようだ。
「あぁ、すまないね。私としたことが、少し思考の整理が追い付かなかったようだ。しかし、本当にガイウス君には驚かされる。1,500少々の戦力で、オークロードをはじめとした上位種含む3,000越えのオークを殲滅なんて、ギルドから父上に報告して、辺境伯軍を動員してもらい、ギルドと辺境伯軍が連携してするものだよ。そして、損害はゼロ。いやはや、やはり、君は規格外だ。」
言い終えたアンスガーさんは、「フゥーッ」と長いため息をはいてお茶を飲む。そして、腕を組んで、何かを考えている。
「ガイウス君。君は今日から6級に上がってもらう。嫌だとは言わせない。前回のゴブリンキングのときでも十分だったのに、今回はオークロードだ。絶対に昇級してもらう。ローザ君とエミーリア君も昇級だ。5級と言いたいが、主な手柄はどうやらガイウス君のようだから、今回は一段階上の6級で我慢してほしい。」
「いえいえ、私なんて、ガイウス君みたいに活躍してません。エミーリアを守りながら、戦うので精一杯でした。」
「私も同じく。【ヒール】とかで援護するのが精一杯だった。」
「だが、君たちは生き残った。私も、現役時代はオークとその上位種と戦ったことがある。
アンスガーさんが笑いながら言う。僕は首を横に振りながら、
「昇級のお話は了承しました。しかし、もし授爵の話しがあっても僕はまだ受ける気になれません。」
「ほう、なぜかな?」
「まだ、僕の功績は“盗賊団殲滅”“ゴブリンキング及び集落の殲滅”“オークロード及び集落の殲滅”の3つしかないからです。せめて五つは功績を挙げたいです。」
「ハハハ。今まで挙げた功績を“3つしか”と言うかね。普通の貴族や冒険者なら“3つも”と言うだろうに。改めてクリスティアーネの将来の旦那候補が頼もしくて嬉しいよ。」
そう言いながら、アンスガーさんは
そう思っていると、執務室の扉がノックされた。アンスガーさんは「どうぞ。」と招き入れる。「失礼します。」とユリアさんとエレさんが入室し、続いて8人の女性が入室してきた。あぁ、“ドーンライト”の人たちか。服装も新しいものを貰ったようで良かった。
すると、“ドーンライト”の8人のうち1人が前に進み出てきた。銀髪の美人さんだ。
「
と言い、片膝を付き頭を下げた。他の7人もだ。僕はすぐに、
「顔をあげてください。僕は“シュタールヴィレ”のリーダー9級冒険者のガイウスです。貴方たちを救出できたのは、タイミングが良かったからです。僕たちは、貴方たちを救うためではなくオークを倒すために、あの場にいたんです。」
「それでも、救っていただいた事実に変わりはありません。
どうしたものかと困惑していると、アンスガーさんが、
「“インシピット”冒険者ギルドのギルドマスター、アンスガー・アルムガルトだ。ベルタ嬢、貴方の実家プライスラー家の寄り親である、アルムガルト辺境伯家の次男だ。この件は私に預からせてもらいたいと思うのだがどうだろうか?」
「僕はそれで構いません。」
「ガイウス殿がそう言われるのであれば、
「よし、それでは、この話は此処で終わりだ。ユリアさん、“シュタールヴィレ”を“処理・解体室”へ。それと、この用紙に書いてある級までの昇級手続きをお願いします。“ドーンライト”のお嬢様方には、私がこれから本部に出す報告書を作るので、その証言をお願いしよう。エレ、お茶を新しいのに替えてくれるかな。さぁ、座って。」
僕たちが席を立つのと入れ替わるように、“ドーンライト”の面々が席につく。僕たちは「失礼しました。」と退室の挨拶をして、ユリアさんの後に着いて“処理・解体室”へと向かう。
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