第42話 調査依頼という建前

 さて、今日、ここに来た目的も折角だから話してしまおう。


「アンスガーさん、実は先日のゴブリン殲滅のあと、オーク達と出会ったんです。僕は身を隠し様子見ていたんですが、そのオーク達の中に一際立派なオークがいて命令していたので、僕はハイオークかオークジェネラルじゃないかと推測しています。そして、もしかすると森の深いところに、オークの巣が出来ているんではないかと・・・。」


「ほう、それは、“黒魔の森”でのことかい?」


「黒魔の森?」


 聞きなれない単語に思わず首をかしげる。


「君が賊を討ったり、ゴブリン討伐をした森の名前だよ。知らなかったのかい?」


「えぇ、ナトス村ではただ単に“森”としか呼んでませんでしたから。」


「まぁ、とにかく複数のオークを森で見たため、ゴブリンのように巣が出来ている可能性があるということか。ふむ、調査をするべきだな。しかし、今、現在うちで一番階位の高いのは準3級のアントンのみだ。ふむ、異例ではあるが、シュタールヴィレに頼んでもいいだろうか?」


「頼まれなくても、討伐依頼クエストのついでに調べるつもりでしたから。」


「よし、それでは、アントンとシュタールヴィレに、それぞれ指名依頼クエストとして“黒魔の森”の調査をお願いしよう。他の冒険者には荷が重い。」


 僕は頷き、「僕たちが巣を見つけた場合は、殲滅しても構いませんか?」と聞いた。ローザさんとエミーリアさんは、さも当然という顔をしていた。アンスガーさんとユリアさんは目を見開いて驚いていたがアンスガーさんはすぐに、


「ハハハ、他の冒険者なら無謀だと思って止めるけど、君の実力は嫌というほど見せられているからね。よし、シュタールヴィレには、巣を見つけたら殲滅までお願いしよう。でも、建前として“指名の調査依頼クエスト”で出すからね。しかし、愉快だ。12歳の子供の言うことがこうも頼もしいとはね。ハハハ。」

 

と、笑いながら承諾してくれた。ユリアさんは、まだ少し心配そうな表情をしている。


「ユリアさん、心配しなくて大丈夫です。装備は昨日さくじつ、辺境伯様からいただいた鎧があります。それに、僕は【召還】が使えます。相手が物量で攻めてきても、しのぐ自信があります。」


「確かに、ガイウスの【召喚】したモノは強かったわね。ね、エミーリア。」


「ほう、ローザ君とエミーリア君は、ガイウス君の武器以外の【召喚】を実戦で見たことがあると。しかも、かなりの力を持っているモノが【召喚】できると。ふむ、1人の冒険者として興味があるが、今回はついていけないからね。残念だ。」


「また、どこかで機会があれば、お見せしますよ。」


 タイミング良く、時計が鳴る。それを合図に僕たちは席を立ち、執務室を出て一階へと下りる。一階につくと、アンスガーさんは「アントン!!」とアントンさんを呼びに行ってしまった。


 僕たちは、ユリアさんについて行き、受付カウンターで指名依頼書を作ってもらい、すぐに受けた。ユリアさんから、


「3人とも気を付けて。オークはもちろんですけど、ハイオークとなると強敵です。しかも、それが群れでいるとなると、数にもよりますがスタンピードなみです。本当に気を付けて。」


 そう言われると、気が引き締まる。僕たちは「はい。」と返事をし、ギルドをあとにした。ギルドを出てすぐにローザさんが野営装備の支度をするか聞いてきたが、僕は【召喚】でかたを付けるつもりだったので、「必要ありませんよ。」と答えた。


 さて、黒魔の森の入口までやって来た。「もう少し中に入ってから、【召喚】をしたいです。」と2人に言うと、了承してくれたので、だいたい30分くらい歩いたところで、【召喚】をすることにした。


「JTAC《ジェイタック》ジョージ・マーティン中尉、任務だ。来てくれ。」


 地面に魔法陣が光と共に現れ、光が収まるとジョージが直立不動で敬礼していた。僕も答礼をする。そこでジョージは姿勢を楽にした。まずは、ローザさんとエミーリアさんにジョージの説明をして、その逆のことと、今回の依頼クエストの説明をジョージにもした。ジョージは笑いながら、


「それは簡単な任務ですな。偵察する場所は、以前、更地にした場所から見て北よりですね。RF-4C“ファントムⅡ”を使用しましょう。機数はそうですね。16機ほどでよいかと思います。」


「わかった。RF-4C【召喚】!!」


 すぐに空を見上げると、魔法陣が空に浮かび上がり光と共に轟音が響いた。ローザさんとエミーリアさんは耳を塞いでいる。16機のRF-4C“ファントムⅡ”が綺麗な編隊飛行で上空に円を描く。早速、ジョージが指示を出し、16機のRF-4C“ファントムⅡ”は散会して、指示された場所へ向かって行った。


 今回も、ジョージからヘッドセットを渡され装備する。ちなみに今の僕は、ヒヒイロカネ製の鎧を付けていて、変に輝いている。う~ん、軽くて頑丈なのはいいけど、町に戻ったら普通の鋼鉄製鎧を買おう。そうしよう。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る