第5話 神社



 連れていかれたのは、学校の裏にある神社だった。


 この学校にこんなものがあったなんて。


 通いなれた学校にも、知らない場所が多くあるのだと今日僕は知った。


 僕はその神社をしげしげと眺めながら、隣の席の少女に「それで?」と尋ねる。


 彼女は無邪気を装いながら「ここで騒いだら、何か起こると思う?」と、近づいてきたこちらの顔を覗き込む。


 その瞬間の僕は。

 ああ、彼女の方が背が低いんだな、とかいい匂いするなとか、どうでもいい事を思っていた。


 いつも着席しながら会話するだけだから、気がつかなかった。


「おーい、君? 起きてる?」


 目の前でひらひらと手を振られた。

 僕はとっさに、「春眠暁を覚えずじゃないよ」なんて変な事を言ってしまった。


 我ながらなんて変人的な反応なんだろう。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る