第47話 本当の私は、弱体化している
ソランジュは目を覚ます。夜中の二時くらいか。
「眠れないニャ?」
隣の布団で、チヨメが反応した。
「すまん。起こしたか」
大分深く酒を飲んだ気がするが。
「いいニャ。ワイも久々に興奮してるニャ。それに回復の丸薬でも飲んでおけば、飲酒の疲労は収まるニャ。明日の朝にでも用意するニャ」
「ありがとう、助かるよ」
「それにしても、この子はどこで拾ってきたニャ? 凄まじいレベルだニャ」
チヨメが、グースカ寝ているリッコを見る。
「お前でも分かるか?」
「分かるニャ。細かくは分かニャいけど」
たった二人の冒険者によって、組織だった盗賊団が壊滅したとギルドから報告があったらしい。チヨメは戦慄したという。
「てっきりワイは、ソランジュだけの功績だと思っていたニャ。でもやっつけたのは、パラディンっていうニャ」
マセッティの警備を担当していたため、盗賊討伐の任を果たせずにいた。しかし、近隣の盗賊団が絶滅し、チヨメは肩の荷が下りている。
「だから、自分の目で確かめたくなったんだろ?」
「そうニャ。なあソランジュ、コイツは何者ニャんだ?」
チヨメが、シッポでリッコの頭を撫でた。
リッコが「えへへ」とニヤけている。
「ショーナ・ドッコイの弟子だよ」
「それだけじゃ、コイツの強さの理由にならないニャ」
「私にも分からんよ」
正直、ソランジュが一番驚かされていた。
なんの予備情報もなく、グシオンの親衛隊を倒すとは。
「相手の戦力を把握せず、だよ? デタラメがすぎる」
「グシオンが絡んでいる盗賊団を壊滅させるなんて、凄いニャ」
健やかに眠るリッコの頬を、引き続きチヨメがシッポで撫でる。
「ありがとうニャ、リッコ」
リッコがいるおかげで、ソランジュも助かっていた。
なぜなら。
「ソランジュ、まだ、力は戻らないかニャ?」
「知っていたのか。お前も」
「何年、友だとをやってると思ってるニャ? 知らぬは己ばかりなり、ニャ」
チヨメが、失敬だといわんばかりに文句を言う。
「すまんな。隠し通していたつもりだったのだが」
魔王アガリアレプトとの闘いは、想像を超えていた。
不意打ちに近い攻撃により、初手で深手を負わせることには成功する。しかし、その後がいけない。
力の大半を使い果たし、どうにか殺せた。
が、長年引きこもらなければならないほど、負傷していたのである。
「リッコを護衛にしたのは、本当に必要だったからニャよね?」
「うむ。私が最強なんて、ウソっぱちさ。人より容量はいいだろうが」
「ソランジュは傷だらけなのニャ。無理は禁物ニャ」
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