第19話 ダンジョンの中

「やっぱり強いよな。」


圧倒的な強さでドンドンと進んでいくナミとシロガネ。


俺は付いていくだけだ。


「とりあえず、五階のボスは倒したから、ここから先は戦闘に慣れる為にシンゴとファミルに頑張ってもらうからね。」


「わかった。」


「頑張ります。」


「ピィピィ。」


「ありがとうシロガネちゃん。」


「ここからは敵も強くなるから気をつけてね。」


「俺とファミルで倒せるのか?」


「焦らなければいけると思うよ。ムリと思ったら、私かシロガネちゃんがフォローするし。最悪、死に戻りになったら、また来ればいいし。」


おぅ…スパルタ……


「何でこの階層からなんだ?」


「最初のところだと、簡単すぎるからね。ある程度は歯ごたえがないと楽しくないから。」


…いや、歯ごたえより安心と安全を下さい。


「それにさ、この階層からは…出るのよ。」


「出るって…?」


「祝福された卵よ。」


「モンスターが落とすのか?」


「そうよ。どのモンスターでも落とすのだけど、レアドロップだから、1日戦って手に入ればラッキーくらいの確率だけどね。」


「でも、ファミルの祝福があれば…」


「充分に可能性はあるわね。」


…俺もモンスター連れて歩いてみたいな。


「じゃあ、シロガネちゃんの仲間を増やすことも出来るんですか?」


ファミルが手を上げてナミに聞いている。


「…そうね。可能性はあるわ。でも、他の種族が誕生する可能性もあるから。」


「シロガネちゃんの家族…楽しみです!」


「ピィ。」


シロガネも頷いている。


「まぁ、とりあえずは戦わないとな。」


手のひらと拳を何度か合わせて、気合いを入れる。


「隊列としては…シンゴが前に行く?」


「う~ん…魔法使いと僧侶だからなぁ…回復をしないのならファミルが前で俺が後ろか?」


「バフ殴りのタンク僧侶ね…2人ならそれがベストかも知れないわね。戦闘が終わったら、杖で魔力を回復させればいいし。」


…そう考えると、この杖は便利すぎるな。


「分かりました。私が前ですね。」


「男としては格好が悪いが頼む。魔法で牽制とメインアタッカーをするから、俺に敵が来ないように妨害を頼むな。」


「妨害ですか?」


ファミルが頭を横に傾げる。


…そうか、ゲームしてないから通じないのか。


「ファミルは敵と戦う前にバフを自分にかけてちょうだい。出来れば『守りの盾』と『祈りの言霊』の2種類をかけて。」


『守りの盾』は防御力アップで、『祈りの言霊』は武器を一時的に清めて聖なる属性を付与して攻撃力アップだな。


「分かりました。」


「時間が来ると切れるから、切れたら、またかけるようにして。」


「はい。」


ナミは俺の顔も見てくる。


…その2つをファミルが使い続ければ、ある程度ヘイトはファミルに集まるだろう。俺がそのヘイトを越えないようにコントロールするってことだな。


やってやろうじゃねぇか。俺はナミに向かって頷いた。


「見せてもらおうか。魔法使いのヘイトコントロールとやらを。」


「…それ言いたかっただけだよね。」


「悔いはない。」


「「?」」


呆れた顔の俺。


どや顔のナミ。


頭を傾げるファミルとシロガネ。


ダンジョンの中に、3人と1匹の楽しそうな声が響いていた。

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