死に場所を求める者

 ――――――――――


 一方、デュラはゴルゴタウロスとの長期戦を演じていたものの、善戦していた。

 機動力ではかなわないため、持ち前の防御力を発揮し徹底的に守りを固めた。

 ゴルゴタウロスが強靭なひづめで広間を駆け抜け、猛然と大鎌を振るうが、デュラは冷静に大盾で防いで隙を見極める。


 ――シュッ!


 攻撃の直後に生まれる、わずかな一瞬も見逃さない。

 すかさず鋭い突きを繰り出し敵の後ろ足を貫く。


「グゥッ!?」 


 ゴルゴタウロスは体勢を崩して勢いよく転倒し床を滑った。

 だがすぐに立ち上がり、デュラへ振り向く。既に体中傷だらけで血が滲み、満身創痍だ。

 デュラは超人的な精神力で、集中力を途切れさせることなく、ただひたすらカウンターを見舞い続けてきた。

 ゴルゴタウロスは懲りずに再び走り出し、ぐるっと円周上に駆け回った後、大鎌を振り上げデュラへ一直線に突進。

 

 ――カチャッ


 デュラは冷静に腰を落とし盾を構え、ランスを後ろへ引いた。幾度も繰り返した構えを乱すことなく平然とやってのける。

 そして、猛然と駆けてくる敵をじっくりと観察し、とうとう攻勢に出ようとした。

 今までの敵の動きとは明らかに異なっていたのだ。

 ここが絶好の機会だと判断したデュラは、盾を前に突き出したまま、迫りくるゴルゴタウロスへ飛び掛かる。


 ――ガキィィィン!! 


 敵が慌てて振り下ろした鎌の先を盾で弾き、右のランスを突き出す。

 その穂先は、寸分たがわず敵の目玉を貫いた。


「グゥヲォォォォォッ!」


 敵は断末魔の叫びを上げ、足をもつれさせて盛大に倒れ力なく転がった。

 最後まで平静を保ち続けたデュラの勝利だ。

 デュラはゆっくりと立ち上がり、ランスを大きく振って付着した血を払うと、柊吾たちの進んだ出口へ体を向け歩き始める。


「………………」


 だがすぐに足を止め、背後を振り向いた。

 ゴルゴタウロスが立ち上がっていたのだ。

 閉じられたまぶたの下からは大量の血が溢れ出しているが、それでも両手を広げ、「まだ終わっていない」と言うように雄たけびを上げる。

 デュラはなんだか懐かしさを覚えた。柊吾に出会う前の自分に重なった。

 目の前の敵は、まるで主を失い、死に場所を求めている騎士のようだ。


 ――カチャッ


 デュラは再び、腰を落として盾を構え、静かにランスを引いた。


 ――――――――――


「――その程度か? いい加減飽きてきたぞ」


 神殿の最奥では激戦が続いていた。

 柊吾とニアがサタンの周囲を飛び回り、息を合わせて同時に攻撃を仕掛けるがシャイニングフィールドの防御が厚すぎて傷一つ付けられない。

 それに比べ、隼の装甲は漆黒の炎によって焦げ、ひび割れ、ニアの竜鱗もティルフィングに容易く裂かれていく。


(これがクラスUだっていうのか……)


 正真正銘のバケモノを前に、柊吾は絶望を感じずにはいられない。これまで戦ったどんな魔物よりも強いのだ。

 それでもいつか隙が生まれることに賭け、ひたすら斬り合う。


「はっ!」


 柊吾は真正面から突進するとバーニアで加速し、勢いよく大剣を振り下ろす。

 サタンはティルヴィングを横へ薙いで弾き、背後に迫っていたニアの爪を受け止めた。

 再度ブリッツバスターで斬りつけるも、無造作に展開された光の壁で阻まれる。

 

(二人とも下がってください!)


 メイの声が頭に響き、二人が後ろへ飛ぶと、最大出力のレーザーが放たれる。  サタンはすぐさま左手を下へ向け、シャイニングフィールドを展開。

 トライデントアイの最大熱量が光の壁を焼くが――

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