第161話 この神殿は○テナ神殿!?

 

 太一はジャングルに密猟者が来た! って叫びながらまた森の中に消えて行った。二度と会う事はないだろうが、元気で過ごしてくれ。ジャングル平和は任せたぞ!


「アニマルパワー使えるようになれよー!」


 太一を見送った後も、アナスタシアはヘーラクの場所を白状しない。一度は納得した癖に、往生際が悪いな。蘭なら、アナスタシアの記憶を見て、大体の位置を把握して転移できたりしないのかな?


(はあ。まあ……このままじゃ埒が明かないからやるけど、今回だけだからね? やりたくないんだからね? わかってる? こんな覗きみたいな真似。ほんとに嫌なんだからね?)


 すっすまん蘭、そんなに怒らないでくれ。後でブラッシングを念入りにするから、許してくれ。


「ヘーラクの位置ならわかりましたから、転移で飛びますよ」


 蘭の言葉にアナスタシアの顔色が悪くなる。


『あっあんた! まっまさかサイコメトラーなの!? 1と2でドラマのヒロイン役が変わってしまう、あのサイコメトラーなの!?』


 おいアナスタシアおい、なんでそんな昔のドラマ知ってるんだよ。闇が深そうだから、突っ込みはやめとこう。


「サイコメトラーって洋一が昔、手を抑えながら呻いて、記憶は読み取っ「あー! あー! もういいから転移しようぜ!」えっうんわかった。皆んな行くよ」


 蘭、見てたのかよ。だってサイコメトリーカッコいいじゃん! 憧れるじゃん! 役者さんもカッコ良かったし! 



 ここは何処だ? なんかパルテノン神殿みたいな作りの建物だな。パルテノン神殿は、写真でしか見た事ないけど実物ってこんな感じなのかな?


「蘭、ここは?」


「ヘーラクにある創造神様の神殿のはずよ?」


 ふうん、ここにケリュネイがいるのか。しかしでけえな、造りも立派だし。正に完成度高えなおいって感じだな。


 俺が神殿の中に入ろうとした瞬間、猛烈に嫌な予感がしてその場を飛び退く。気づくと師匠が剣を抜き、神殿に向けている。


「洋一君、飛び退いたのは正解だよ。飛び退いていなかったら、頭が消し飛んでたよ。アナスタシアちゃん、虎次郎の影に隠れていて。蘭ちゃんは、洋一君とリュイちゃんのガードね」


 師匠の警戒の仕方が半端ない。蘭にまで支持出しをするなんて、そんなに強いのか?


「師匠、そんなに強い敵なんですか?」


「うーん、攻撃の正体がわからないんだよね。洋一君も攻撃が見えなかったでしょ? 多分蘭ちゃんも見えてないよね?」


 蘭にも見えてないのか? 蘭にも見えない攻撃ってやばいな。しかも攻撃の痕すらない。


「見えませんでした……警戒はしていたんですが。正直洋一が、飛び退いて避けてくれて良かったです」


 そんなレベルかよ、リュイはなにか感じなかったのかな?


『ヨーイチ、ここおかしいよ。精霊がいないし、瘴気も感じないけど怖いよ……』


 リュイが俺のポケットの中でめちゃくちゃ震えている。


「リュイ大丈夫だからな! 俺や師匠がいるから!」


 リュイを元気付けるが正直めちゃくちゃ怖い! うおっ! また嫌な予感だ! 


 俺は横に飛びゴロゴロと転がり回避をする。転がりながらも連続して嫌な予感が続く。


「狙いは俺かよ!」


 皆んなから距離を取らなければ、皆んなを巻き添えにする訳にはいかない!


「俺が狙いみたいだから皆んな俺から離れろ!」


 カッコつけたものの遮蔽物が何も無い場所でいつまで逃げられるかわからないぞ! 


霧雨キリサメいるんでしょ! 悪趣味な事やめなさいよ! それともなに、殺す気なの!?』


 アナスタシアが虎次郎の影から叫んでいるが、俺には余裕がない。何故なら今も必死で回避しているからだっ!


「あぶねっ! なんだよ! 俺がなにしたんだよ!」


『あーもう! 霧雨! 良い加減にしないと許さないわよ!』


 アナスタシアが再度叫ぶと、嫌な予感が急に消える。


「おっ終わったのか?」


 神殿の方を見ると、神殿の奥から黒の和服を着て腰に刀を下げた、黒髪短髪の額に傷がある男が現れる。


「よーよー。よく避けたもんだなあ、我の攻撃を初見であれだけかわしたからつい興がのっちまってなあ。イケメンの兄ちゃんに神獣さんよ、そんなに警戒しなさんな。もう攻撃はしねーよ」


 そう言って刀から手を離し、両手を上げひらひらと降る霧雨。


『あんたねえ! リサはどうしたのよ! あんたじゃ話にならないわ!』


「うるせえなあ、リサならケリュネイのとこにいるよ。身重なんだから、ぎゃんぎゃん騒いでんじゃねえよ。殺されてえのか?」


『身重ってあんた何人目よ!』


「5人目だよ、我達ラブラブだからなあ」


 こいつ嫌いだ! リア充だ!


『ラブラブってあんたねえ。ケリュネイは瘴気に犯されたりしてないの?』


「瘴気? ああ邪神の眷属が来たからなあ、ほれ」


 霧雨が指を刺すと、百舌鳥の早贄宜しくな感じで、魔族が石の杭に刺されている。


「あんな感じでよお、見せしめを大量に作ってやったらこなくなったなあ」


 石の杭に刺されている魔族の数は100を軽く超えている。


『相変わらず悪趣味ね、彼奴らどうせ死なないように調整してるんでしょ?』


「当たり前だろ? 彼奴らは死んだら瘴気を大なり小なり生むからなあ」

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