第121話 魅惑 誘惑 悪魔の力


 蘭が回復し、俺の肩に乗る。回復が早いが、無理してないかな? 心配になるが、今は桜さんの状態をきちんと確認しなければ!


 うーん、そうだ! これは悪魔っ子コスに違いないって現実逃避している場合じゃないか。


 額の髪をどけると、しっかりと角が生えている。更に桜さんの腰を見ると、尾骶骨の辺りから尻尾も生えている。これは作り物とか、そんなチャチな物じゃない。


「あれ? おかしいな? 肩甲骨の辺りに羽がある様に見えるんだけど」


 目がおかしくなったかな? 


『ヨーイチ! しっかりしなさい! 桜は悪魔と混ぜられちゃったのよ。意識が戻って、桜のままなら良いけど』


 悪魔と混ぜられた? そんなフュージョン的な事がありえるのか? 異世界だからなのか? それにままなら良いけどって含みのある言い方だが、そうじゃないなら、リュイは桜さんをどうするつもりなんだ?


「師匠! 顔を真っ赤にして鼻血を出してないで、解決策をプリーズ!」


 師匠は鼻血を垂らしながら、目を逸らしている。


「いやあ、うーん。困ったな、前例が無いから僕にはどうしたものか……せめて神とかなら何とかなるかなあ? 多分」


 師匠にしては物凄く歯切れの悪い言い方だ……。神、神か、アマルナに払える金はもう無いし、創造神は来ないだろうなあ……。そうするとエロスか……エロスには頼りたくないんだがなあ


「蘭、なんとかできない? こう悪魔的な部分をひっぺがすとかさ」


「私の力じゃ無理よ。桜の精神の保護は出来ても……」


 蘭でも無理かなら、仕方ない。俺の些末な感情よりも、人命優先だ!


「俺のターンドロー! 変態エロスを召喚する! 出よエロス!」


『はーい』


 こっこいつ、俺がこの場の空気を和ませようと、某社長の真似をしたのに、鼻くそをほじりながら出てきやがった! しかも寝てたのか、寝癖だらけだし


「エロス、桜さんを治せるか?」


 エロスは桜さんを一通り眺めて、俺の真正面に立ち


『うーん? 無理かな? 細胞レベルの融合だし、多分創造神様でギリ? いや厳しいかなー。あっ! だから暇してる癖に来なかったのか。自分の面子的な意味で』


 まじかよ……エロスやファンキー爺いでも無理とか、じゃあ桜さんは一体どうなるって言うんだ?


『まーサキュバスの力だけ封印すれば良いんじゃない? 尻尾と角は慣れたら隠せるだろうし』


 封印すれば……ん? サキュバス? えっ? サキュバスなの? マジで? あのエロの代名詞のサキュバス様なの? 


「えっエロス、さっさささささサキュバスってのは、まことなりか?」


 落ち着け、焦るな俺。サキュバスってのが、確かかはまだわからないんだ、Be coolだ! 野猿だ! 


『まことなりだよ? ヨーイチが混ぜたの? ヨーイチも好き者だねえ』


 ニヤニヤしながら、俺を見てくるエロス。とりあえず、頭をぶん殴る。


『いてっ!』


「ノリで細胞レベルの融合なんて出来るかよ! 友達だぞ桜さんは」


 エロスは殴られた頭を愛おしそうに触りながら


『じゃあサキュバスの力は封印してもいいよね? エッチな展開もわトラブ○的な展開もなしでいいよね?』


 ぐっ! 糞おおお! なんて卑劣な! 無しでいい訳ないだろ! 桜さんのおっぱいでサキュバスなんだぞ! あれ? リュイさん何故に魔力を溜めていらっしゃるのかな?


『ヨーイチのバカ! スケベ!』


「ぶばっしゃああああああ!!」


 いつもより強めの雷を食らった……。正直ふざけ過ぎた、すいません、本当にすいません。


「エロス様、とりあえず封印して貰えますか? 回復と説明は私がやるので」


『いいよー』


 エロスが、指から小さい黒い塊を桜さんの口の中に投げ入れた。大丈夫なんだよな? あれ、鼻くそじゃないだろうな? 


 桜さんの身体が、ビクンと痙攣する。


『おわり〜! ヨーイチ君名残惜しいけど、見たいドラマの再放送があるからまたね! 水戸黄門の初代なんて中々見れないからね!』


 そう言い、エロスは消えて行った。水戸黄門の初代って、俺も見たいんだけどなあ……。


「桜を回復するわよ。葵念の為いつでも桜を拘束できる様にして。リュイ様は、洋一が馬鹿な事をしないように見張っていてください」


『ラジャ!』


「了解」


 封印したなら、拘束しなくてもいい気がするが、エロスがした事だから、蘭の警戒はもっともか。でも俺が変な事をしないようにって、俺の扱い酷くないか?


神聖回帰の術ゴットヒーリング


 蘭の羽が桜さんの額に乗ると、金色の光が桜さんを包み、桜さんを癒していく。


「蘭、それ使っても大丈夫なのか?」


「桜、一人だけだしなんとかなるよ。ちょっとしばらく飛べないかもだけど」


 やっぱり無茶してたか……。


「俺が運ぶから安心してくれ!」


 五分もしない内に桜さんの身体が動く。


「あれ、ここは? 洋一君に蘭ちゃん? それにリュイちゃんに知らない人?」


 桜さんが、ゆっくりと目を開け、俺達の顔を見ながら、名前を呼んでいく。


「良かった! 桜さんは桜さんのままで!」


 俺は桜さんに近付き、桜さんの肩を抱く。桜さんは、キョロキョロと辺りを見てから、自分の身体を見る。


「えっ? なんでござきゃああああああああ!!」 


 桜さんは、顔を真っ赤にして悲鳴を上げ、俺を引っ叩く。


「フビライハン!」


 桜さんに思いっきりビンタをされ壁に激突する。桜さんってこんなに強かったのか……無念。

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