第48話 お前はファンキー 俺もファンキー


 紗香さんが、言い淀んでいる。誰かを人質に取られてるパターンか!? もしくは、力が強すぎるから下界に影響を与えちゃうから、神界から出れないパターンか!? それとも喋れる様にしたから、その分は働いて返して貰うでー! の悪徳金融パターンか!?


「どっち!?」


「「えっ?」」


 蘭と光一が、間抜けな声を出して俺を見ている。なにを2人して、悠長にしているんだ。これはピンチだぞ! 紗香さんが、神界から出れないパターンかもしれないんだぞ!


「紗香さん、どっち!?」


「どっちといきなり言われても……」


 紗香さんが、困惑している。これは口止めされてるパターンか!


『別に神になっても下界に行けるよ。僕なんて、週7で降臨してるし』


 週7!? 日本で言ったら、毎日じゃねえか! 適当の神エロスでは、あてにならん!


『気絶してるアナスタシアも、新作のお菓子が出たから下界に言ってくるわーって、良く下界に行ってたし。アマルナ何て、自分の担当世界で商いしてるし』


 お前ら、駄目神の話は聞いてないんだよ!


「お前らが、駄目なのはわかってるから、静かに鼻をほじってろ!」


 エロスはまた鼻をほじり出す、どんだけ鼻くそ入ってんだよ。しかも自分の服で拭いてるし。あっ食いやがった! 小学生かよ!


「修行が終われば、普通に下界に行けますよ? アナスタシアちゃんに以前封印して貰った、魔力大活性のスキルを制御出来れば、修行も終わりですし」


 あれ? エロス達は拒否できないとか何とか言ってなかったか?


『僕達が言ったのは、神になるのは拒否できないよって言っただけ。別に担当する世界に降りちゃいけないなんて、言ってないよ』


「え? まじで?」


『まじで』


 奇妙な間が生まれる。怪しい……


「マージマジマジカ?」


『マージマジマジデ』


 俺は、無言でエロスの頭を引っ叩いた。


「紛らわしい、真似すんな!」


『痛っ! ありがとう! でも地球には行けないよ? あくまでも担当する世界だけだから』


 俺に、叩かれた頭をさすりながら、頬を赤くしている。めちゃくちゃ気持ち悪い。紗香さんも引いてるし。


「縛りはあるのか。じゃあ俺達、人間が地球に行くのは?」


『知らね』


「ん? もう一度聞くぞ? 地球に行く方法は?」


『知らね』


「てめえええ!!」


 エロスに殴りかかろうとしたら、光一に止められた。


「洋一君、ストップ! ストップ! エロス様に聞いたって、わかるわけないよ!」


『エロス様に聞いたって、って言う部分は気になるけど、その通り! だって他の世界に行く事なんて、興味ないからね! あっでもヨーイチ君が、今暮らしている元アナスタシアの世界には、乗り込んじゃうからよろしく!』


 駄目だこいつ、本当に使えない。


「エロス様、それは流石に……引き継いだ私が困るのですが……」


 紗香さんが困っている。そりゃそうだ。こいつが来たら、なにをするか、わかったもんじゃない。危険過ぎる、俺の貞操的な意味で。


「地球に戻れなくて、紗香さんは、そのいいんですか?」


 光一がおずおずと紗香さんに聞いている。


 なにせ、光一は、地球に戻りたい気持ちが強いからな。紗香さんは困った様に笑い、俺達を見る。


「洋一君が、あの暗い世界から、助け出してくれました。おかげで、外の世界に行けました。皆様に出会えて、私は本当に感謝しています。それに私と、地球で縁があるかもしれない、洋一君と出会えましたから。それだけで私は、幸せです」


「でも、でも地球には……」


 光一が抵抗している、俺は、紗香さんの言葉に何も言えなかった。


「それに私が、生きてきた時代は、貴方達が暮らしていた時代よりも大分後みたいですからね」


 紗香さんは、光一を優しく諭した。


「それに、皆さんに会えない訳じゃないですからね」


 紗香さんの笑顔はとても儚げで美しかった。思わず見入ってしまった。


 ここは、年長者として雰囲気を変えなければ。お通夜ムードは俺達には、似合わないし。


「なあ、アナスタシアって神界で引き取れないの?」


『うーん。創造神様が、神の資格を剥奪しちゃってるからねえ』


 神が資格制度なら、色欲魔神であるエロスの資格を、今すぐ剥奪しろって。


 蘭が、一点を見つめている。


「蘭、さっきから静かだけどどうしたの?」


「いや、さっきから……多分創造神様? がこっちをガン見してるんだけど……」


「「『えっ?』」」


『ハロロー! 儂が、創造神だよーん!』


 アロハシャツを着て、グラサンをしたファンキーな爺いさんが走ってきた。不気味過ぎるわ!


 毎回思うんだけど、神様ってもっと神々しく現れるんじゃないの? 後光がピカーって、感じで


「ハロー! 俺が、柊洋一だよーん!」


 とりあえず、負けるわけにはいかん、こちらの主張を伝えなければ!


『御主! 中々やるな! 儂びっくり!』


「ファンキー爺いちゃんは、邪神をやっつけてくれるかなー!?」


『だが断る!』


「断るのかよ! じゃあ光一達、帰りたいと思ってる地球人を地球に返してくるかなー!?」


『更に断る!』


「断るのを断る!」


 ムムムと睨み合う、ファンキー爺いと更にファンキーな俺。


「洋一、話が進まなくなるし何よりうるさい。紗香、洋一をよろしくね? 創造神様の神気にあてられて、気絶した光一と元から気絶してるアナスタシアのを、保護をお願い」


「はっはい」


 紗香さんに、手を引かれ、ファンキー爺いから離れる。光一はエロスに引きずられている。


『そもそも、邪神ってアルテミスの管轄だから、儂管轄外だし』


 今、アルテミスって言わなかったか!?


「ちょ! 爺い! アルテミスを知ってんのか!」


「なにか知ってるなら、教えてくださいませんか?」


『どうしたものかなあ』


「ファンキー爺いよ、教えてください。蘭も俺も紗香さんもあいつの被害者なんだ」


『そんな事は、知ってるけど〜君達、神界に来れたからってなにか勘違いしてないかい?』


 ファンキー爺いの言葉と、鋭い眼光に蘭と紗香さんがゴクリと息を飲み緊張が走る。


 俺は、蘭達とファンキー爺いの間に立つ。


「勘違いってなんだよ! ファンキー爺い」


『誰の許可も得ずに、儂らの世界に入り込んで、情報だけ持って帰れると思ってる? 五体満足でいれると思ってる?』


「はっ! 神がどれだけ偉いか、エロいかは知らないけどな。蘭や紗香さんや光一に、手を出すつもりなら、老人だろうと女だろうと、子供だろうと全力でぶん殴る!」


 言い放ちファンキー爺いを、睨みつけた。


『それが御主の選択か?』


「選択も何も、男であり年長者の俺が身体を張らないでどうすんだよ! 蘭は、家族であり相棒でありパートナーだぞ! それに光一は、子供だぞ? 紗香さんは女だぞ? 俺がやらないで、誰がやるって言うんだ!」


 ファンキー爺いはニヤリと不敵な笑みを浮かべた。

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