ヴェニスの商人

ええ、確かに、私は「胸の肉をよこせ」と、言いましたよ。

でもそれは、「お前に貸す金なんかない」ということ。

お金を貸せと言われても、誰にでもホイホイと貸せるもんではありません。特に相手はキリスト教とかいう邪教の男、勝手な理由で利子を帳消しにしたり、そのうえ、「神の祝福だ」とか言って貸した金を天引きすることだってあったんですよ。

だから私は、「お金は貸せません」という意味を込めて「胸の肉をよこせ」と言ったんです

お金を貸したんじゃない、強奪されたんです

それを、ちゃんとお金を返したらいいんです。それを「お前は胸の肉をよこせといったそれ殺人だ」とか言って人の財産を奪ったんです。

「胸の肉をよこせといったいったろ」いいえ、それはでっち上げです。やつが「お金はかえせない、さあ、胸の肉を取れ」とか言い出したんです。それを後ろで「それは殺人だ!」とか言って、でっち上げたんです。

あの裁判では、私の仲間はみんな追い出されました。あいつの仲間だけの裁判だったのです。


皆さん、よく考えてください。

私は商売人です。

人間の胸の肉なんて売れませんね

商売人はそんなもんほしいとは思いません。

だから、その時点で、「金は貸しません」って言ってるということがわかるじゃありませんか


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