第12話 作戦2
あの雷作戦以来、私とパパの間に特に変わった事は無かった。
お姉ちゃんとの茶話会は、お姉ちゃんの受験とか、合格したあとの新しい部屋選びとか色々とお姉ちゃんが忙しくて、最近疎かになっていた。三日前に、久しぶりの茶話会が開かれた。文字打ちが面倒なので最初から会話だった。
「彩夏、あれから何か進展有った?」
「全く無いです。雷も無いし」
「もし彩夏が、更なる進展を望むなら、いい考えが有るんだけど、覚悟ある?」
「うーん……彩夏の気持ちは変わっていないし、これからも変わらないと思うし、でも覚悟と言われると……」
「彩夏の気持ちが大事だから、無理にとは言わないけど…………」
「分かった、お姉ちゃんに任せる。彩夏頑張る」
「分かったわ、よく聞いて」
「今度、私引っ越しするでしょ。大学の傍に」
「それで、その時、お父さんに彼を紹介しようと思っているんだ」
「彩夏も来るよね」
「うん」
「引っ越しと会食したら遅くなると思うんだ」
「それで、ビジネスホテル予約して置くね。彩夏とお父さんの部屋を」
「ダブルの一寸良い部屋にするから」
「お父さんには、直前まで言わないから、秘密にしていて」
「うん」
「後は、彩夏が頑張るんだよ」
「覚悟もそうだけど、念のため用意もして来てね」
「用意って、何を」
「コンビニとかに売っているあれよ。私は恥ずかしくて買えないけど」
「あれね、分かったけど、彩夏も恥ずかしい」
「何言っているの!覚悟があれば恥ずかしくないでしょ」
「行った事のないコンビニで、大量のお菓子のなかに入れて買えばいいでしょ」
「分かったわ。やってみる」
「でも、それは万が一の為の物だからね。うちのお父さんに限ってそんな事は無いと思うけど、一応お父さんも男だからね」
「上手く甘えて、気持ちを伝えられるといいね」
「ありがとうお姉ちゃん、私頑張ってみる」
今、パパとJrスイートの部屋にいます。
パパは、部屋が予想と違って、フロントに電話したり、お姉ちゃんに電話していた。
お姉ちゃんは、うまく誤魔化していたのが、お父さんのスマホからの音漏れで判った。
何となく、二人とも、不安定な状態で、普通を装って、時間だけが過ぎて行った。話の肴になったのは、あの好青年です。それしか話題を出せる状態じゃなかった。私の好きな人と名前の発音が同じな好青年よ、今日は勘弁してくれ。
そして、一人で入るには大きすぎるお風呂に別々に入って、ホテルのガウンを着て、同じベッドに入った。パパから、ベッドが大きいから離れて寝ようと言われた。最初は言われた通りに離れていたが、私に背を向けて寝たふりをしているパパの背中にノーブラの柔らかい物を押し付け、後ろから抱きしめた。パパは襲っては来ないと確信しながら。
そして、パパが寝ていると仮定して私は告白をした。
「パパ、いつもありがとう」
「私は、パパの事が大好きです。それは、大人の私が大人のパパを……だよ」
「子供の頃から、大好きだったけど、それが初恋と気が付いたのは中学生の頃かな」
「でも、初恋で終わらせるつもりだったよ」
「去年、パパがわたしを助けてくれて、その頃から初恋が大人の恋に変異したんだ」
「パパの心の中はおばさんが占めているのも解っているんだよ」
「でも、何年かして彩夏が入る隙間が出来たら入れてね」
「彩夏、待っているから」
「それまで、いままで通りよろしくね」
そして彩夏は、力の限りパパをを後ろから抱きしめました。
――パパに気持ちが届いたと信じて――
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