第171話 暇だから依頼でも受けようかと言う話

取り敢えず、悪魔の動向を見る為、ラナ領に暫く留まる事にして、ブラックジャガー獣人のノワが、悪魔軍の元へ偵察に行く事にした。


剣聖ルイは、俺に対するゴブリン達やラナの態度を見て、距離感を迷っている様だ。


「タクミ様、本日はお日柄も良く──」


「はぁ、ルイ、何言ってるの? 普通で良いよ、普通で。」


「はぁ、ここに暫く留まる事になるのでしょう。何か冒険者の依頼的な事はやらないのでしょうか?」


「つまり暇だから冒険者ギルドの依頼をしようと、そう言いたい訳かな?」


「いえ、そこまでの話ではなくて、タクミ様が忙しいのであれば──」


「良いよ、行こうか」


「そ、そうですよね。すいません。お忙しい中──」


「だーかーらー、依頼を受けても良いよ」


「え? ええええええ! 良いんですか?」


「おいおい、ビックリするくらいなら聞くなよ」


「あ、ありがとうございます。」


「だけどノワが悪魔軍偵察中だからなぁ、探索者シーカーのスキルがあるヤツがいた方が良いなぁ」


シュタッ!


「お呼びでしょうか」


ゴブリンキングのゴブマルが忍者の様に出現した。


「ん? ゴブマルは探索者シーカーのスキルがあるのかな?」


「勿論でござります。忍者足るものシーカー程度のスキルは問題ございませぬ。ノワ様からも不在の間はノワ様に替わり、タクミ様の命令に従う様に言われております。」


「忍者? まあ、いいか。良し、採用だ。一緒に冒険者ギルドに行こうか」


「御意」


俺が椅子から立ち上がると、何も言わずとも後ろに立っていた、ジャイアントハーフの聖騎士リンもついてくる。


と言う訳で俺、ルイ、ゴブマル、リンの4人で冒険者ギルドに行く事にした。


ゴブマルはそのまま街に行くと問題がありそうなので、姿を隠して同行していく。


ゴブリンの野営地からラナ領の最大都市は、歩いてもそれほど時間が掛からない。


門まで来ると、門番が2名門の両脇に立っているが、特に呼び止められる事もなく街に入った。


入市税などは無いのだろう。


道行く人に冒険者ギルドの場所を聞き、冒険者ギルドに向かう。


冒険者ギルドに着くと、まあ、そこそこの大きさの建物だ。大きくもなく小さくもない。2階建ての石造りの建物だ。


中に入ると正面に受付カウンター、向かって右側に併設された食堂と、どこに行っても同じ作りだ。俺は受付カウンターから向かって左側の依頼票掲示板の前に立って依頼を見た。


時間的に朝の混雑時間を過ぎているので、人は疎らだ。CランクとDランクの依頼はほぼ無くなっているが、AランクとBランク依頼はそこそこある。


AランクとBランクの冒険者が少ないので、塩漬けになってるのだろう。


「ルイ、好きなのを選んで受注して良いよ」


「塩漬けの依頼を全部やっちゃいますか?」


「討伐だけにしてくれ、街は離れられないので護衛はダメだし、ノワがいないので素材採取も効率良くは出来ないだろう」


「分かりました」


ルイがAランクとBランクの討伐依頼を根刮ぎ剥ぎ取ると受付に並んだ。


その間、俺とリンは食堂の椅子に座ってルイを待つ事にした。


「あれぇ! リン様じゃ無いですか?」

前に森助けた冒険者パーティー『森の狩人』の5人が声を掛けてきた。


『森の狩人』リーダーのキオーツに、シャマナとルツの女性、キニラサとウコーシュの男性と5人のパーティーだ。


「ここに座って良いですか?」

リンの隣にシャマナ座った。


「タクミ様、その節はありがとうございました。」

とリーダーのキオーツが頭を下げて、俺の隣に座った。


「あの時は本当に助かったっす」

とキニラサはちょっと馴れ馴れしい。


「ルツも感謝してるなの。リン様は素敵なの」

妙な語尾で話すルツ。


「拙者も助かり申した」

こいつ江戸時代の武士か!とツッコミたくなるウコーシュ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る