第119話 ルイに秘密を話した

ミーズ村を出て、近くの森に入る。


「タクミ様、ミーズ村に悪魔が出現しても、本当に村人達を助けに行かないのですか?」

と剣聖ルイがちょっと悲しそうな顔で聞いてきた。


「俺がいる時だったら戦う事も吝かではないけど、態々悪魔が出現するのを待ってまで討伐する気はないなぁ。」


「そうですかぁ。ドラゴンも一瞬で倒したし、悪魔も倒した事があるんですよね?」


「偶々ね。ドラゴンだって、このブーツを持って無かったら、倒せないから逃げたかもねぇ。」


「そうなんですかぁ?」


「神に疑問を持ったらいけませんよ。ただ信じるのみです。」

リンが割り込んで来た。


「はい。」

素直に頷くルイ。


「おいおい、俺は人間だ。間違う事もあるから、意見があったら言ってくれ。」


「承知しました。そういう事にしますね。」

ニコって笑うリン。


何か勘違いしてないか?


「そうじゃ無くて・・・、まあ、いいか。」


リンの「分かってますよ。」って言う顔を見たら、これ以上言っても無駄な気がしてきた。


うんうん頷くブラックジャガー獣人のノワも俺を信じきってるのが分かる。


この子ら大丈夫か?って思うよ。


「タクミ様は、サトウ国の不利になる事はしないのですー。」

ノワが当然と言う顔でルイに言う。


「え!」

ルイは「どう言う事ですか?」って疑問の顔を俺に向ける。


「おいおい、ノワ喋り過ぎだ。」


「あ!すいませーん。」


「サトウ国と言えば、最近建国したばかりで、人族と亜人や獣人の差別がない、素晴らし国ですよね。タクミ様は何か関わりを持っているのでしょうか?」


「ルイは俺が冒険者ギルドから、特級アンタッチャブルに指定されている事を知ってるか?」


「はい。知っていました。ドラゴンスレイヤーのタクミ様にとって、当然の事だと思います。」


「だったら、他言無用と言ったら秘密を守れるな?」


「はい。誰にも漏らしません。仮に特級アンタッチャブルじゃなくても、命の恩人であるタクミ様の言う事は、この命をかけて守ります。」


「おお!そうかぁ。この話は他言無用でお願いするが、サトウ国を作ったのは俺だ。」


「ええええええ!それでは国王様!」


「いや、国王は元勇者教の教主レンに任せている。」


「元勇者教の教主!!そうすると、やっぱり・・・。」

(タクミ様は使徒様?)


「それ以上は聞くな!」


ルイは俺の事を勇者だと思ってるんだろうなぁ。勇者としての活動をする気は無いぞ。


「は、はい。」


はぁ、ルイにバレたけど、まぁいいか。悪魔を今は討伐しない事も納得した様だしね。


「ところでノワ、この森には虫系のモンスターが多いんだよね。」


「はい。その通りですー。」

ちょっと先行し、しゃがんで薬草を採取していたノワが振り向き、立ち上がりこちらを見て答える。


「今のところ、半径100mにモンスターいませんねー。」

ノワは耳をピクピクしている。


「そうか、森の探索はノワに任せるけど、お勧めのモンスターはいるかい?」


「そうですねー。キラースパイダーが良いと思いますよー。身がカニの味なので、美味しいですー。」


カニ?クモだろう?


「良し、それをメインに狩っていこう。」


「承知しましたー。」


ノワはまたしゃがんで、取り残した薬草を採取した後、鼻をクンクン、耳をピクピクしながら辺りを見回すと、ピョンと木の上に飛び乗り、器用に枝を掴んでスルスルっと木に登っていく。


ブラックジャガー獣人のノワは、肌の色が黒く黒系の服を着ている為か、木の上に登ると一瞬見えなくなる。


シュタッ!


少し後、ノワが戻ってきて、木の上から飛び降りて来た。


「この先の右方向に進めば、キラースパイダーがいます。」


「分かった有難う、そっちに進もう。案内は任せるよ。」


「はーい。」


ノワが耳をピクピクしながら前を進んでいく。

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