第64話 レクの依頼を受けた

ダンジョンの地下5階、第三王子レクが俺に、『地下10階まで護衛して下さい』ってお願いしてきた。


「何でお前等と一緒に、地下10階まで行かなきゃいけないの?俺はお前等が嫌いなんだよ。」


「王家の決まりで地下10階にある王家の祠で、証を取って来ないと行けないのです。」


「それは、お前等の理由だろ、俺がそれに付き合う理由は無い。勝手に行けば良いじゃない。」


「後日御礼は致しますのでええええ、何卒お願い致しますうううううう。」


「断る。」


「そこを、そこをなんとか!」


「くどい!」


「お願い致します。」

レクは土下座を続ける。


むむ、王族とか貴族って基本嫌いなんだよねぇ。


『同行しろ!』って上から目線で強引に言われたら『うるせえ!』って言って、倒しちゃうんだけどねぇ。


こう、下手したてに出てお願いされると、殴ろうとも思えないしなぁ。


どうしよっかなぁ。


「う~ん。」


土下座のレクを見ながらちょっと考えていると、冒険者達と騎士達が上目遣いで俺を見ている。


「王の継承権を得る為に証が必要なんです。それを今回得られないと放逐されてしまいます。頼りの護衛隊長が来れなくなったので・・・。」


護衛隊長は俺が再起不能にしたんだけどね。


「おいおい、それじゃまるで俺が悪いみたいじゃないか。護衛隊長は自業自得だぞ。」


「は、はい。タクミ様には何の責任も御座いません。」


ふむ。まあ、王族にこんなに下手に出られたら、聞いて遣ってもいいか。


「分かった。地下10階までは行ってやる。」


「おおお!有難う御座います。」


「貸しひとつな。」


「承知しました。報酬以外に今後何かあれば、私の出来る範囲の事はします。」


喜ぶ冒険者達と騎士達。


立ち上がって両手を出して、握手しようとするレク。


俺はそれを無視。


「あら、珍しく貴族に優しいのですね。」


ジャイアントハーフの聖騎士リンが俺に囁く。


「まあ、ここまでお願いされれば、無下に出来ないかと・・・ね。」


「そうですか・・・。」


と言う事でレク達を護衛しながら、地下10階を目指す事になった。


行く手を遮るモンスター達を、バッタバッタち打ち倒し進む。


「凄いです。」

「な、何でそんな事が出来るのでしょうか?」

冒険者達が褒め称えるが・・・。


「おいおい、お前等同行してる意味があるの?」

冒険者達が戦闘を見てるだけなので、思わず口に出ちゃう。


「あはは。」

苦笑いで頭を掻く冒険者達。


ほんとに此奴ら・・・。


イビルアイには毎回麻痺させられるし、嘆きの亡霊であるバンシーの泣き声に気絶したり、スプリガンには叩き飛ばされるし、モンスターが多いと逃げ出すし、な~んの役にもたっていないぞ。


寧ろ邪魔!

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