第32話 『闇の狩人』ノワ

公爵家長女アンナを殺した、黒豹獣人であり暗部のノワ。


アンナとの会話の中で、獣人であることを蔑まれていた事から、何か思うところがあったのだろう。


立ち尽くすノワをそのままに、俺達は例のごとく、殺した騎士達の武具を、アイテムボックスに収納した。


炎を出したマグマの杖は、手に入れられてラッキーだったな。


強力な炎の範囲攻撃の手段を手に入れた。


この世界の魔法使い達は魔法を発動する際、詠唱を必要とするが、異世界転移者の俺は無詠唱で発動出来るし、MPも多いので、かなりの有効利用が出来そうだ。


「ノワ、大丈夫か?そろそろ行くぞ。」


「は、はい。大丈夫です。」


「ところで、公爵は今どこにいる?」


「軍隊を率いて、タクミ様を待ち伏せに行きました。」


「ああ、擦れ違った奴等の中に居たのか。子供は長女アンナ、次女カノン以外にもいるのか?」


「跡継ぎの長男アキラがいます。」


「そいつは何処にいる。」


「居城内に居ると思います。」


「ふ~ん。まあ、会わなけりゃ、それでも良いがな。」


俺達は公爵の居城を後にした。


一旦牧場に戻るのだ。


入口で暗部の2人から地竜と馬車を受け取り、馬車に乗って居城を出て、そのまま都市も出る。


ノワは居城に残り、暗部の仲間達と共に公爵の財産を奪ってくるそうだ。


ーーーーーーーーーーーーーーーーー


俺とリンが牧場に着くと暗部前隊長のケントジジイが待っていた。


「ノワは助けになりましたか?」


「おお、ジジイ、良い子を手配してくれて有難う。助かったよ。」


「それは良かった。ノワは私の孫なんです。」


「孫?ジジイは人間で、ノワは豹獣人だよね。」


「ははは、息子の嫁が獣人なのです。それに豹獣人では無いのです。正確にはジャガー獣人です。」


「ノワから豹獣人と聞いたんだけど、豹獣人とジャガー獣人は違うの?」


「森の王者として名高いジャガー獣人は、豹獣人よりも大きくて力も強く、虎獣人や獅子獣人と並ぶ種族です。」


「ふ~ん。」


「我々暗部は常に戦力の向上を模索しています。技術や武具は勿論ですが、種族としてのスキルにも注目し、森の王者として名高く、暗殺スキルが素晴らしいジャガー獣人と、よしみを通じる事が出来ました。」


「ほほう。」


「その中でもノワは、ブラックジャガーとして生まれてきました。ブラックジャガーはジャガー獣人の中で稀に生まれる事があり、闇の属性が色濃く、暗殺に特化した存在で『闇の狩人』として恐れられています。」


地球では、黒豹は豹の劣性遺伝と言われていたから、獣人も同じなんだろう。


「それは凄いね。」


「ノワはジャガー獣人のスキルを持ち、ブラックジャガーの特性も備え、暗部の技術を修得しました。現在の暗部ではNo.1の実力者です。」


「公爵の長女は良く思って無かった様だが・・・。」


「そうなのです。王家や公爵家では、まだまだ人族偏重主義の者が多く、亜人を蔑む者がおり、ノワはかなり悩んでいた様です。」


「そうだろうね。」


「そんな時、亜人の国を作る事を指示したタクミ様の話を聞いて、一助になるためタクミ様の元に行きました。どうか、従者として御側に置いて下さい。」


「分かった。ノワの能力が高い事を知っている。こちらからお願いしたいくらいだ。」


『闇の狩人』ノワを従者にする事にした。

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