第21話 公爵の騎士達

コボルト達を助けた俺は、馬車に戻った。


「タクミ様、有難う御座いましたワン。」

コボルトのコウキが抱きついて来た。


「よしよし。」

コウキの頭を撫でる。


でも、何も下調べ無しにコボルト達を解放したので、人間の商人や冒険者が悪者だとは、限らないんだよなぁ。


その上金貨も奪っちゃったし・・・。


コボルト達を捕まえたのは、別人の可能もあるし、コボルト達をただ運んでた可能性だってある。


所謂、善意の第三者かも・・・。


まあ、俺はやりたい様にやるって決めたからいいか。


悪者上等だ。


結局後ろめたいので、前を走る馬車と擦れ違わない様に、迂回して進む事にしたあたりは、俺ってつくづく小心者だと思った。


さて、目的地はフカクオ公爵領最大の都市ナキガサ。


既に公爵領に入って走っているが、まだ先の様だ。


公爵の全財産を奪取して出国するのだ。


暫く馬車が走ると・・・。


「タクミ様、前方より大勢の人が来ますワン。」


「ん?人?」


「人間だワン。」


「何だろ?」


馬に乗った十数人の騎士隊が、此方に向かってきた。


「そこの馬車止まれ!」


騎士隊は俺達の馬車を取り囲んだ。

聖騎士リンは、馬車を止める。


リンとコウキは御者席から降りて、俺とジジイも馬車から降りた。


「公爵の騎士隊ですな。」

ジジイが耳元で囁く。


「どう言った用件でしょうか?」

一応丁寧に尋ねてみた。


「お前等は聖騎士リンとその仲間で相違ないか。」

騎士のリーダーがリンに話し掛けた。


「相違御座いません。」

リンが答える。


「良し、連行する。手を出せ。」


「おいおい、何の罪で連行するんだよ!」

俺は思わず声を荒げてしまう。


「つべこべ言うな。」

騎士がいきなり殴り掛かって来た。


リンが左手から盾を出して、受け流す。

「タクミ様に何をする!」


リンは短槍を出して構え、コウキとジジイもナイフを出して構えた。


俺は素手で構える。

魔王の手甲はつねに装備している。


「ほう、抵抗するのか、やむを得ないな。」

騎士はニヤッと笑って剣を抜き構える。


それを合図に騎士達は一斉に武器を抜き構えた。


「はは~ん。成る程、俺達が公爵の全財産を受け取る前に、殺そうって言う腹づもりか。俺達が武器を構えるのも想定通りって訳だ。」


「ふん。たかが騎士爵風情が公爵を敵に回して、無事でいられると思うなよ。」


騎士は剣の尖端をリンに向ける。


「その武器も防具も公爵からの貸与品だろう。だったら俺の物だな。全て貰おう。」


「はあ、何、馬鹿な事をぬかしてる!

かかれええええ!」


騎士達は一斉に踏み込む。


俺は時を止めた。


雷の杖で全員気絶させる。

全員で16人、3分と掛からない。

時間が短いとMPの減りも少ないのだ。


時を動かす。


騎士達は一斉に倒れた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る