いつか短編に昇華する、もしくは消化されるための雑文集《フラグメンテーションフィールド》

みれにん

レトロゲームと古本屋 F-ZERO(&デレステ)

 ふぉー、と自動ドアが開き、巨大おだんご頭が古本屋の店内に入ってくる。


「あれ、大ひ……矢留おにいちゃん。スーファミなんかひっぱりだしてどうしたのさ」

「おう、高清水か」


 なぜか『おにいちゃん』と言い直したところはあえてのスルーで、スーパーファミコンを一四型ブラウン管テレビにセッティングする手を止めずに返事をする大平。


「お前ならわかってくれると思うのだが」

「なになに」

「『|アイドルマスター シンデレラガールズ スターライトステージ《デレステ》』で、GRAND LIVEってあるだろ」

「うん。今日もイベント周回でプレイしまくってたよ」

「あれの譜面でさ、スライドの途中の判定がめちゃくちゃたくさん出てくる場面で、ライフ回復の特技発動することあるでしょ」

「あたしはあんまりライフ回復編成しないけど、まあ、そうね」

「お前は上手すぎるからな……」

「いやいやまだまだー。で?」

「ああ、それで一気にライフ回復する様子を見ていたら、どうしてもコレやりたくなって」


 セッティングが終わり、パチン、と電源を入れる。


「お……、『F-ZERO』? スーファミ版は見たことないかも」


 すぐにプレイを始める大平。選択したマシンはピンクのカラーの『FIRE STINGRAY』だ。


「見てろ見てろ」


 スーファミの拡大縮小機能を見せつけるように勢いよくスタート地点が表示され、シグナルがカウントを始める。

 ビッ、ビッ、ビッ、ビーッ!

 大平の機体はロケットスタートを決め、すぐにコースの左の輝くピットゾーンに突っ込む。


「なんでいきなり回復してんの!」

「いやーこれこれ、これがやりたくてさ」


 ふぉんふぉんふぉん、と、高速でピットゾーンを駆け抜けながら回復する大平。


「あ、これ、さっき言ってたGRAND LIVEのスライド時の回復みたい?」

「察しがいいな高清水P」

「いやあ……どうしようもなく、レトロゲーム脳だよねえ、大平P」

「オーパスPと呼びたまえよ同僚」

「じゃああたしも蔵付酵母Pって呼んでよ同僚」


 古本屋『ミレニアムブックス』は今日も平和である。

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