自宅で友人と


「なあ………お前あいつが見えるか?」

「ん、ああ」

「勝手におれんちに入って来てるけど一体、誰なんだ?」

「お前の親父だろ?」

「え?」

「おいおいまじかよ、びっくりしてる場合じゃねえぞ、お前の親父だろ? 運動会で見たことあるよ、お前のことカメラで一生懸命、撮ってたじゃん」

「そう言われてみればそんな気もしてくるな」

「顔ぐらい覚えてるだろ、晩飯とか一緒に食わないの?」

「食うよ………カボチャの冷スープと、キノコのグラタン」

「それいつよ?」

「さあ、十七年くらい前かな」

「よく覚えてるな、その時の献立を」

「ああ、おれの好物だからな」

「ところでさ、お前、明日のテスト大丈夫なのかよ?」

「全然ダメだよ、だからカンニングしようと思ってるんだ」

「誰の?」

「隣りの奴の」

「さとし?」

「違う」

「よね?」

「そう」

「あいつバカだよ?」

「まじで?」

「まじで」

「じゃあどうするかな………」

「もう一人は誰なの?」

「何が?」

「隣りの奴」

「モルカワさん」

「あの?」

「あの」

「へー………あのモルカワさん」

「あのモルカワさん」

「鼻からラーメンを食べることの出来る」

「耳からパスタを出すことの出来る」

「彼女、可愛いよね」

「どこが?」

「言ってみただけ」

「ああ」

「言ってみただけ」

「わかったよ」

「お前、それよりも親父さんと何か会話しなくていいのかよ?」

「目で会話したんだよ、既に」

「いつ?」

「お前がモルカワどうのこうのって言ってる時に」

「何、喋ったの?」

「昨今の世界情勢、あと駅前に新しく出来たドーナツ屋のこととか」

「アイコンタクトってやつだな?」

「ああ」

「お前、嘘つくなよ」


唐突だがこの詩はここで終わる

作者が飽きたのだ

作者が飽きる

それは言ってみればこの世界に原子爆弾が千個、投下されたことと同じ意味なのだ


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