血塗れの指


血塗れの指を眺めていた

(これっておれの指なんだよな?)

付着している血が誰のものかはわからなかった

ただそれが血であることはわかった

(何故わかったのだろう?)

赤い液体なんて他にもいくらでもあるのに

不思議だけがぽつん放置されていた

待てよ

おれは思った

(これは本当におれの指なのか?)

最初はおれの指だと思ったが

もしかしたら違うんじゃないのか?

断定してしまって果たして良かったのだろうか?

よく見れば全然、違う他人の指なのかもしれないのに

おれは映画か何かを観ている観客のよう

それを眺めているだけなのではないか?

画面に映っている登場人物の血塗れの指先

本当のおれは観客席に座ってポップコーンを頬張りながらそれを眺めている


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