桜並木の下をきみと歩く


おれは知っている

おれは狂っている

現状を把握している

だからおれはまだそれほど狂っていない

だがそのように考えることは

果たして正常と言えるだろうか?

やり直したかったこの人生ってやつを

最初から

そしてまた繰り返すのか

同じ罠に躓くのか

隣りでは恋人が心配してくれている

だがおれはその顔に全く見覚えが無いんだ

何かが爆発した

そして一瞬で元通りに復元された

だから目の前に広がっているこの景色は今までいた世界と同じ筈さ

でも何かが足りない

とてもよく似ているだけ

そこが今日からおれの居場所さ

おれは

だった

おれは

でした

「狂ったふりをすればいいよ」

きみは言った

陽気な春の午後というこの瞬間に

おれは常人のやり方を忘れてしまっていたが

頷いた

知らない恋人と手を繋いで歩いて行こう

足元で動き回る靴がただ不思議だった


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