第2話 彼女の親友はいけ好かない女だぜ

 フローラルを落とすにあたって、僕とセバスはいつも通りの行動を取ることにした。女たらしの僕らの作戦はまず、共通の知人を彼女と作るとこからだ。調べによるとフローラルにはお気に入りの侍女がいるらしい。侍女の名前はエミリーと言う。御用商人の娘で貴族との仲をとりもつためにも、フローラルの家に下働きに出ていると言う事情のようだ。エミリーは庶民の出だから、お近づきにもなりやすいわけで、要するに僕らにとっては朝飯前のターゲットと言うこと。


 庶民の出と言っても上流階級の子だから、僕らとの接点もないわけではない。彼女は週に一回、とある歌会に出るのだ。早速その詩会に出ることにするぜ。


 あ、そうだ彼女はセバスの趣味にドンピシャなんだ。明るくて快活で元気な女の子がセバスの趣味で、僕はそう言うのより、大人しくてほんわかした子が好き。セバスはゴツイお兄ちゃん風だから、明るくワイワイ酒場で飲める子が好みなんだ。


 さて、教会のホールを借りて歌会が始まるぞ。この国の歌会というのは上流階級の遊びで決められてメロディーにそって、あるテーマの歌詞を即興で歌い論評するというものだ。僕は、皇家が関心を持っているということで歌は歌わないけど、ご観覧するというやつだ。セバスは僕の護衛。


 今日の歌のテーマは偉大なる聖王を讃える歌だそうだ。気を使っているな。

 

 「岩島を見守る海鷲がいる限り、荒波は海に起こらず。」


 などとエミリーは歌っている。このアトランティス大陸を侵略者から守った聖王を讃えている。

聖王は大陸を古代に統一した偉大な王で皇家の始祖ともされているのだ。


 「ミカエル様、総評をお願いします。」


 僕はいろんな人の詩を適当に褒めた。適当に。あー面倒。


 そしてお待ちかねの歌会の後の懇親会だ。彼女の隣に座ることができたぞ!


 「ねぇ、君の歌、雄々しくてカッコいいね。女の子が歌ったとは思えないよ。雄々しくて惚れちゃうな。あ、歌にね。」

 とりあえず軽く「ライク」の気持ちを伝えておく。


 「そんなことより、ミカエル様の歌を聞かせていただければ嬉しかったです。次は参加されるのでしょ?次があるかどうかわかりませんけど。今日はナンパですか?」


 ストレートな子だな、苦手なタイプ。セバスはこういう気の強いの好きだろうけど。


 「まぁまぁ、ミカエル様は帝国でも屈指の歌い手なんです。決してナンパなどではありませんよ。」とフォローするセバス。


 ま、全部お抱えの歌士があらかじめ作って用意した歌の暗記だけどね。でも、大したもんだろ?暗記するんだからさ。


 「そうなんだ。ふーん。まぁいいわ、セバスさんでしたっけ、あなたは素敵ね。ハンサムだし軟弱なナンパ師よりいいわね。」


 と当てつけのようにセバスと仲良くなるエミリー。セバスは胸板も厚いし、俺は優男だから、まぁ言われることはあってるよな。腹は立たない。なぜってこれも計算通りだからさ。僕は嫌われ役に今回は徹しているだけ。それをフォローするセバスという役割分担なんだ。セバスうまいこと連絡先交換できただろうな。


 これで一応共通の知り合いはできたぜ。あとは、セバスが僕の隠れた良さをエミリーに伝えて、初戦は成功というところかな。

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