06 せっかく双子で転生したのに妖精に好かれすぎる。

「すっげぇ人だまりだなぁ」


 進学パーティーが開かれてから三時間ほど経過したというのに、レックスとリリスを取り囲む取り巻き達は未だに解散することはなかった。

 俺は遠目からリリスたんの紫色のドレスを眺めることしかできない。彼女との距離を痛感して少し胸が痛む。


「皆、次期国王と王妃に少しでもお近づきになりたいんだろうな。親にも散々言われていることだろうし」

「ふーん、貴族って大変だな」


 今思えば俺達はマドレーヌばあさんに引き取られて本当によかった。じゃなきゃ絶対にあんなに自由で穏やかな生活は出来なかっただろう。正直もう既にホームシック気味な所はあるし。

 俺の隣ではデュナミスが桜の頭を撫でながら、次はこれをお食べと散々甘やかしている。つかこいつら、いつの間にこんなに仲良くなったんだよ。デュナミスもなんでそんなに幸せそうなんだ。


「ずっと気になっていたんだが、君達の魔法属性を聞いていなかったな。ちなみに私は風属性だ。君達は? マドレーヌ様の弟子となると、もしかして希少な光属性だったりするのか?」

「? わたしの、ぞくせい? なにそれ?」


 桜がキョトンとする。魔法自体に属性があるのは知っていた。魔法ってのは自分に好意を持ってくれた妖精達から呪文で命令して魔力を借りるという仕組みである。その妖精達には世界四大要素の炎、水、土、風もしくは光か闇のどれかの要素が備わっており、妖精達に借りる魔力もそれに準ずるというわけ。


「なにそれって……君達の契約した妖精の属性を聞いているんだ。人間は一人だけ妖精と契約を結ぶことが出来る。君達もここに編入してこれたんだから、契約してるんだろう?」

「契約? してないけど……」

「はぁ!?」


 デュナミスの様子から見るに、普通の人はどうやら一人の妖精と契約して魔力を得ているようだ。だが、俺と桜は妖精達と契約なんかしてない。何故なら。


「ばーさんにそう言い聞かせられてるんだよ。『妖精はみんな友達でいなさい』ってな。ほら、契約なんてしたらそれは主人と従者って関係になるんだろ? それに命令するのって俺も桜も柄じゃないからさ」

「そうそう。契約なんかしなくても皆力を貸してくれるよ」

「なっ、そ、そんなわけないだろう! 妖精達が契約者以外の人間に力を貸すなんて! 妖精達は非常に気まぐれなんだ! 気に入られるのだって難しいんだぞ? だから契約という形で縛るしかないのに……」

「そうは言ってもなぁ。な?」

「うん」


 そうしているとタイミングがいいのか悪いのか、俺と桜の方へ空中にいた妖精達が寄ってくる。

 おそらく自分の主達がレックス達に夢中なので暇つぶしにこちらに来たんだろう。しかもデュナミスの髪の毛に隠れていた妖精(おそらくデュナミスと契約している妖精)まで俺と桜の周りをくるくる回りだした。

 俺は俺の髪をぐいぐい引っ張ってくる妖精達にしっしっと手を振る。桜の方はされるがままで、「くすぐったいよ~」なんてクスクス笑っていた。そんな俺達を見て、唖然とするデュナミス。そして拗ねた様に腕を組んだ。


「な、なるほど。妖精達が自ら寄ってくるなんて。確かに好かれているみたいだな。わ、私のアイレムまで君達を気に入っているようだしぃ?」

「そういうことだ。おいおい、拗ねるなよ。っていうか妖精に名前をつけているのか?」

「す、拗ねてなどいない! 本来は妖精に名前をつけることで契約を結べるんだ。おかしいのは君達の方なんだぞ」


 そう言われてもな。ぷりぷりと拗ねているデュナミスについつい顔が緩んでしまう。やっぱりデュナミスも可愛いな~流石攻略対象キャラ。でも俺は勿論リリスたん一択だけど!

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