何度も来た場所
「...て、お..て、シオン起きて!」
俺は体を揺すられ、聞き馴染みのある声に起こされる。
「う~ん、どうしたのルリ?」
俺はぼんやりした意識の中、俺を起こした本人ルリを見た。
そんなルリは、焦っているのか、困っているのかそんな顔をしていた。俺はここでようやく意識がハッキリして、違和感に気が付いた。俺達が寝ていたのは、ライオネルに紹介された。ムーテの宿の筈だったが、今いる場所は何もない白い空間、終わりはなくただただ真っ白いだけの空間。
俺は何回か来ている場所、そう転生の間だったのだ。
「シオン、ここは何所?なんかシオンと似ている気配がするんだけど」
転生の間に始めてくるルリは、辺りを警戒しているのか、右手にオーディンから貰った、神槍グングニルを何時でも振るえるように持っていた。
「ルリ、ここは」
「よく来たののぅ、2人とも。まっておったぞ」
俺が説明しようとしたその時、いつも通り何もなかったはずの空間から、ドゥエサスが現れた。急に現れた事に驚き、ルリは一歩退いて身構えたが、それが知ってる人だと気が付くとすぐに矛を収めた。
「なぁ、ドゥエサス説明してくれないか?」
「ん、なにをじゃ?」
「ルリがここにいる理由だよ」
ここは、シュテルクストではない。俺みたいな特殊な人間ならわかるが、ルリのような元々世界の住民がここに来れる理由を俺は知りたかった。
「そこの魔王の穣ちゃん、えっと。ルリじゃったかな?は、少なくとも1度世界を出ているし、グングニルを使って一時的にじゃが神の力も使えてるのじゃから、この場所に来る資格もあるのじゃよ。だから呼んだのじゃ」
ドゥエサスに言われて、俺は納得した。ここに来るのに資格が必要なんて事は初めて知ったのだが、それは置いといて。
「ところで、ニュクスは?」
「あのババアなら、調べ物していて、ここには来ないのじゃ」
てっきり居ると思っていたが、ちょっと残念。この
「ドゥエサスさん、先ほどは矛を向けてしまい申し訳ございませんでした」
「気にする事ないのじゃ。わしも驚かしてすまんのぅ」
方膝をつきルリが頭を下げてる。だがドゥエサスも気にしてなく、むしろ申し訳なさそうにしていた。
それから、少し他愛のない会話を交えた。
「それで、ドゥエサス今回の用件は?」
「うむ、おぬし達に伝えねばならんことがあってな」
本題に入った途端、急に顔つきが変わった。そして雰囲気も変わった。俺もルリも気を引き締めた。
「まず、魔物が活性化したのじゃ。それに乗じて昔の魔族が原初の魔王の復活を企んでるのじゃ。各地から生贄を集め、今の魔族を滅ぼそうとしておるのじゃ。それと邪神の力が強まったのじゃ。当初の予定ではまだ数10年は復活しない筈じゃったのだが...」
そこまで言うとドゥエサスは歯切れを悪くした。封印が限界なのだろう。言われなくてもそれぐらいは察せた。
「ドゥエサス、邪神は後どれぐらいなんだ?」
「2年...下手をすれば1年以内に復活するのじゃ」
「な!!」
「ドゥエサスさん、原初の魔王はどれぐらいなんですか?」
「う~む、そっちは何とも言えんのじゃけど、わしとニュクスの見解では、1年は封印が持たないのじゃ」
かなり深刻な事態だった。俺が倒す敵、邪神の復活。さらにはルリ達の先祖に当たる魔王までもが復活する。どれぐらいの戦力があるのか分からない上に、個人の戦力すら見当が付かない。
走行考えているうちに、俺とルリの体が光り始めた。
「シオン、時間のようじゃな。今後邪神の事も考えて極力、わしとシオンの連絡は取らない様にするのじゃ、そして最後に、帝国には気をつけるのじゃよ」
最後の言葉を聞いたとき、俺が返事をする間も無く、意識は途切れた。最後のドゥエサスの表情がやけに苦しそうなのが頭から、離れなかった。
「..じ、主。起きてください」
「ん?ここは?」
転生の間から、帰ってきた俺は宿の天井を見上げている。俺の横にはまだ寝息をたてて眠っているルリの姿があった。
「ん?今の声は?」
俺を起こした声は間違いなく聞こえた。だがその声は妙に大人びていて、聞き馴染みのない声だった。
体を起こし、辺りを見渡せばいやでも目に入る人がいる。いや正確には獣人だ。
「やっと、起きましたか。おはようございます主」
「??」
俺の方を向き一礼するその獣人に俺は見覚えなかった。14歳の俺よりも身長は高く大体170センチはあるだろう。すらっと伸びた手足、その獣人は薄いシャツ1枚とを着ているだけで、女性を表す膨らみがかなりあるのを確認できた。
「誰だ?」
「誰とは、酷いですね?我ですよ。レオです」
「はぁぁぁ!」
衝撃の事態に思わず大きな声を出してしまった。隣で寝ていたルリはビクンと振るえ、何事かと飛び上がった。そして他の部屋に居る家族も俺の声に反応して、集まってきてしまった。
「シ、シオンにぃその人誰?」
全員レオを名乗る獣人を見ながら、唯一キャロ声を出し、質問する。それに対して、レオを名乗る獣人は改めて挨拶した。
一瞬だけ間が空き、皆がポカーンとしている。そして俺と同じよう驚愕の声を上げるのだった。
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