戦いの後
ことが起こったのは、数年前。リアンが5歳の誕生日を迎えた当日の事だった。その場にはライオネル、ワン、リアンの3人がおり、リアンのステータスを確認する。予想はしていたが、やはりリアンのステータスに〔獣人の姫〕はなくリアンの今後の事を、ライオネルとワンは話し合っていた。
その部屋は限られた者しか入る事はなく、そもそも使う機会も殆どない部屋、この部屋の存在自体あまり知られていない。
リアンが部屋から出ても、話し合いは続いていく。
だが突如、2人しかいない部屋に女の声が聞こえた。
「私は、ジェシカ」
何所から現れたかわからない、女に対し、ライオネルとワンは問答無用で襲いかかる。だが瞬時に返り討ちに会ってしまった。
「国にとって不要でそこそこ潜在能力を秘めている、貴方の娘を貰いたいわ」
膝を付いているライオネルに対し、おもむろにジェシカと名乗った女は近づいて行く。ライオネルはジェシカを睨み理由を聞き出す。
「何故、俺の子供を奪おうとする」
するとジェシカは、不敵に笑ってライオネルに言葉を返した。
「生贄にするの、私達の主と、協力者の野望の為にね」
その言葉を聞いたライオネルは、傷ついた体に無恥を打つ様に、そのとき出せる全力でジェシカを殺そうとした。だがジェシカは、赤子の手をひねるように、簡単に対処して、格段に大きいライオネルを壁まで吹っ飛ばした。
「いくら生贄にすると言っても、今の状態じゃ何にもならないから、もう少し成長したら奪いに来るわね」
そう言い残し、ジェシカはその場から消えた。ライオネルは悔しかった。国内最強と呼ばれた自分が、手も足も出なかったのだから。ただ一人の娘すら、守れないのだから。
そして、苦渋の決断。ジェシカに渡すぐらいなら、僅かな可能性にかけて誰かに育ててもらおうと考える。まだ幼いリアンを森に置いてきたのだ。
当然、その場にいなかったレオーネは激高した。自分の夫がそんな事をすると思ってもいなかったから。森に捨てた理由も、スキルを持っていなかったからの一点張り、何度も衝突した。その時から、ライオネルは冷酷な王である事に勤め、周りに何があったのか悟られないようにした。何度も衝突した結果、ライオネルは、最愛の妻であるレオーネを特別な牢屋に閉じ込めた。表向きには国家反逆の罪として。
それから、少し時が経ち、ライオネルの前にジェシカが現れる。その表情は、まるで玩具で遊んでいる子供のように、晴れ晴れとしたものだった。
「あの子を逃がしたのは、知っていたわ、だけど私も生贄が欲しいの、だから選ばせてあげる。貴方の子を見つけ出して、私に差し出すか、貴方の奥さんを差し出すか」
ライオネルは絶望を感じた。この女はどちらか選ばなかった時点で両方を奪い去ろうとする。そんな顔をしていたように見えた。その結果
「わかった。リアンを渡そう、俺の部下が連れてくるから、そしたら城に来てくれ」
「わかったわ、なるべく早くね」
それだけ言い残し、ジェシカはライオネルの前から消えた。とうとう追い詰められてたライオネルは、この事を信頼できる部下と、ジェシカをしているワンにだけ話し。情報収集を始める。
リアンの居場所、一緒にいる人間、ジェシカの企み、その協力者。
そこでシオンという少年を知る事になる。魔王の娘と恋人であり、サブメラの英雄の息子。その少年なら。
そう思い、一切説明せず無理やり城に来てもらう事にした。
結果はライオネルと、その部下を圧倒する実力、約束であった娘も妻も攫われる事なく、ジェシカは撤退したのだ。
「で、その話しの結果が、レオが死にかけたって訳か」
「それに関しては、謝罪しよう。すまなかった」
そう言いながら、ライオネルは頭を下げる。すると隊長達も頭を下げた。正直巻き込まれた側からすると、許せる事ではなかったが、邪神の事になると俺も関係ないわけじゃない。
まだ予想の段階だが、ジェシカが言ったとされる、主とは邪神。つまりドゥエサスの子供であるティファの事だろう。そして協力者これは
「昔の魔族...」
ルリは、ぼそりと呟いた。ジェシカがいかに強力であっても数の前には意味をなさない。どうゆう取引があったかは知らないが、アイラさんより前から生きてる魔族が結集して、邪神に力を貸してるらしい。
「ライオネル、どうして私に話してくれなかったの!私だって役に立つわ。貴方が悩んでいるなら、私にも背負わせてよ」
レオーネさんが目元に涙を貯めながら、ライオネルを怒鳴りつける。それにライオエルは慌てふためいていた。
「はぁ、今日の所はいったんを取って戻ります。また明日改めて話しましょう」
「あ、あぁわかった。宿は手配してある。トゥーそこまで案内してやれ」
「わかったよ、父さん、ではシオンさん達、行きましょうか」
騒がしい城を後にして俺達は宿に向かう。宿についてからは、トゥーとも別れその日をゆっくり過ごした。各自戦闘で疲れてることもあり、俺以外の皆は早々に部屋で休んで行った。
だが俺は、不思議と眠気に襲われない。部屋にいても暇でしょうがないので、夜の町に繰り出して行った。
ムーテの夜は騒がしく、まだあちこちでお店の光が、目に映る。
何となくで、ブラブラしていたら、見覚えのある姿が見えた。どうやら相手もこちらに気が付いたようで、後を付いて来いといわんばかりに、先導した。
そしてそいつは、あるお店の前で立ち止まる。
「居酒屋かよ」
そうまるで居酒屋なのだ、俺はそいつと一緒に、その光の中に消えて行った。
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