分散
「俺は、リアンを殺して、そこの獣のスキルを奪い、俺の娘に継承させる」
その言葉を聞いた瞬間俺は鬼神刀を構え、ライオネルに向かって駆け出した。
だがその途中、2人の獣人に俺は止められる。愚直に飛び込んでしまったからか、簡単に捌かれてしまった。
「そんな簡単に、王の所まで行かせるわけなかろう」
「ホースさん、むしろここは褒めるべきでは、自ら死地に飛び込んでくるこの少年を」
俺を止めた馬の様な獣人と、俺を褒めるように言ってくれる、ねずみの様な獣人。どちらも動きに無駄はなく。俺の追撃も対処できるように構えていた。
強行突破も考えたが、1度冷静になるため家族の所まで退く。すでにこの場の空気は戦う感じになっていて、各自武器を構えていた。
「ローガリアが誇る最強の戦士たちよ、見せてやれ実力の違いと言うやつを」
ただ一言、ライオネルがそう言うだけで、周りの士気が高まるのがわかった。だが当の本人は椅子に座り直し高みの見物を決め込んだ。
「シオンにぃ道は開くから、あとはお願いね」
「兄さんの為に頑張るよ~。〈ファイナルエクスプロージョン〉」
先制攻撃とばかりにシャロが帝王級の魔法を打ち込む。だが城はおろか炎が消えた後でも獣人達は、無傷だった。
「ほぉ、帝王級か若いのに凄いのぅ」
「感心してる場合ですかフーロ様、何度も連発されてはこちらも持ちませんよ」
獣人達の先頭にいつの間にか立っていて、大盾を構え他の獣人を守った。フーロと呼ばれた梟の獣人とそれに魔力を送って支援している9番隊の隊長で羊の獣人シープ。
「何所を見ているの?」
「シオンはやらせない」
俺の目の前でルリが攻撃を弾く。攻撃してきたのは細身の獣人?正直他の獣人に比べ獣人要素が少なすぎて、どうなのかわからない。
俺達が攻撃をすれば、獣人達が守り、獣人達が守れば俺達が守る。現状ジリ貧なのは間違いがない。
それにいち早く動いたのは俺お父さんと母さんだった。
「シオン、あとの事は任せるよ」
「シオン、戻ってやられてたらお母さん怒るからね」
俺に耳打ちすると、ねずみの獣人、おそらく象の獣人、フォック、ヒッポムを巻き込みどこかに移動した。いきなりの出来事でその4人も「な?!何が起き」とだけ言い残し消えて行った。
「なるほどね、大人数で戦ってたら埒が明かないと思って、ここの戦闘に持ち込む作戦なんだ。」
感心したように、ライオネルの横にいるワンは呟く。未だにワンも元の場所から動いていない。
これでこの場に残ったのは俺達が7人、獣人が8人。人数差が一気になくなった。
「主、ワンという少女は我がやります」
「あ、この前の子供だ。いいよ相手してあげる」
ワンはレオを案内するように、別の場所に連れて行く。さすがのレオも移動中まで攻撃はしてなかったがその目は、始めて見るような目をしていた。
「なら、わし達の相手をしてくれるのは、誰かのう?」
「フーロ様、まさか俺も一緒にですか?」
「?なにを言っておるのかシープよ。当然じゃないか?」
「そっちが2人なら私達が相手するわ」
「キャロちゃんとのコンビネーションで終らせるの~」
フーロとシープ。キャロとシャロも決まったらしく。この広場から出て行く。シャロは地味にさっきの魔法を止められた事を根に持っているっぽい。あの2人を相手にするフーロとシープはちょっとだけ可哀想に見えた。
「じゃあシオン、残った4人の相手は任せて。新しい槍の試しもしておきたいし」
「舐められたものだな、たかが小娘相手に4人全員が行くわけなかろう?」
「本当かな?」
ホースの言葉に余裕そうな表情を見せたルリはその場で〔魔王:覚醒状態〕を発動する。当然その異様さに気が付いた獣人達は息を呑んだ。
「この場でやりあってもいいけど、4人相手にするには狭いから、場所を変えましょ」
そう言いながらルリは残った隊長達と一緒に〈転移〉を発動してこの場から居なくなった。
結果、ここに残ったのは俺と、ライオネルと、トゥーと、リアンだった。
この状況にライオネルはため息を付く。
「王を残して、この場から消える従者がどこにいる。馬鹿者共が」
渋々といった感じにライオネルは立ち上がり、大きな剣を構えた。
「トゥー、リアンを頼むぞ」
「わかりました。シオンさんも気をつけてくださいね」
俺も改めて鬼神刀を構え直した。それと同時に神の力を使い自分の強さを強化する。
こうして、ローガリアの王との一騎打ちが始まろうとした。
「せいぜい、俺を楽しませてから死ねよ!!」
自分を奮い立たせるためか、大声を出しながらライオネルは俺に対してまっすぐ突っ込んできた。
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