ローガリアに向かう道
「---。という事でアレス俺達しばらく学園に行けないから。フォルテ先生にうまく言っといてくれ」
「はぁ、わかったこっちは何とかしとくから、シオン達も気をつけろよ」
カルガを中心とした。獣人部隊の隊長達が帰った後。俺はアレスのいる王城に来ていた。そこで、これまでの経緯とこれからの予定を話し合っていた。
「それにしても、不運だね獣人の国も。はい紅茶」
「ありがとうハナ。いい香りだな」
後から部屋に来たハナは、お菓子と飲み物を用意していた。日本に居たときでは味わえなかった紅茶を堪能しつつ、ホッと一息。
「悪いかったな。遅い時間で2人でイチャイチャしたかっただろうに」
「な!」
「え!」
俺が謝ると、アレスとハナは驚きながら声を上げる。そして顔を少し赤らめていた。日も完全に落ちていて普通であれば寝てる時間に、訪問したせいで、2人の時間を奪ってしまった事に素直に申し訳ないと思ってしまう。
2人は、世間から見れば王子とその従者だから、堂々とイチャイチャする事もできない。だからこそ夜の時間は2人だけの時間なのだ。
まぁ何故そんな事を知ってるのかは、この部屋に来る前に、2人で手を繋ぎながら仲良さそうにしてる所を見たからなのだが。
「コホン、それよりシオン。お前は獣人国の噂について知っているか?」
「いや、何も知らない」
明らかに、話題を変えつつ。ちょっと真面目な話し方になるアレス。
そもそも俺は自分に必要な知識は持っているが。他の国の事など殆ど知らない。流石王子と言うべきか、アレスはその手の話しも知ってるのだろう。
「獣人国ローガリア、そこでは幾つかの黒い噂が流れてる。もちろん噂であって真偽は分からないけど。1つはローガリア全体の武力強化。僕たちの国サウスや、他の国から武器や装備品などを大量に購入してるらしい。2つ目は獣姫レオーネの行方不明。どうやら内部で抗争が起きて、居なくなったとか。他にも幾つかあるが、大きいのはこの2つだけかな」
「わかった。一応気をつけておくよ。それじゃそろそろいい時間だし俺は帰るな」
「あぁ、帰ってきたら、またここに来るんだぞ」
「シオン君。お土産待ってるね」
アレスから聞いた、噂を頭の片隅にいれ、俺は王城を出て行った。
家に帰ってからは、明日の準備をして素早く眠りに付いた。
翌日、予定通りローガリアに向かった。俺、ルリ、キャロ、シャロ、父さん、母さん、レオ、リアン、ナツメ。全員が揃って出かけるのは初めてのことだった。
俺達のステータスなら、ローガリアまで1日で到着する事も不可能ではないが、今回は旅行という事で、母さんと父さんの提案で馬車で行く事になった。
およそ一週間の馬車の旅、さらに俺達以外にも、商人とその護衛の冒険者4人がローガリアを目指した。
そして現在三台の馬車の内、俺だけが家族の馬車ではなく、冒険者の乗っている馬車に同乗させてもらっている。現役の冒険者から何か有益な情報を得られないかと思っていたのだが・・・
「シオン君、凄い知識量ね」
「私も知識には自信があったんだけどな」
「将来は凄い冒険者になれるよ!」
「...頑張れ」
何故か俺が絶賛される状況になってしまった。
彼女達は女性だけのパーティー。パーティー名をフローズらしく、パーティーリーダーで1番しっかり者のランさん。唇を尖らせ悔しがっているのがパンジーさん。俺の頭を撫でながら褒めてくれるのがリップさん。小声で応援してくれるのがクロさん。
彼女達は最近Bランクになったばかりの冒険者、今回の護衛はどうやら報酬もいいらしく受けたらしい。
冒険者には2種類のランクが存在する。それが個人ランクとパーティーだ。個人ランクは冒険者になった者なら誰でも付いていて。実力、達成したクエスト、貢献度が評価されランクが付けられる。
またパーティーランクは、個人ランクとそのパーティーでの達成したクエストでランクが付けられる。
基本的なランクの付けられ方は、両方とも似ている所があるが、個人ランクには昇格クエストが存在する。その内容が、特定の魔物の素材回収や討伐、ギルド職員との模擬戦だったりする。
のんびりとした馬車の旅は案外心地よく。お姉さん達と楽しくお話しながらローガリアにいけるなんて最高である。
だが、旅には、正確には旅行だがやはり問題も付き物だった。
いきなり馬車が大きく揺れ、その場で止まる。急な事であったが流石Bランク冒険者と言うべきか、各自武器を持って、馬車から出る速度は早かった。だが彼女達は衝撃的な物を目にする。
「なぜ、こんな所に【
「...それも3体いる」
4人の中で言葉を発せたのはランさんとクロさんだった。Bランクの魔物【
「シオン君、家族と依頼人を連れてこの場から遠くに行ってくれ」
「ランさん達はどうするんですか?」
「頃合を見て撤退するよ」
【
ただ、それは家族一行が普通の家族であった場合だ。
「馬車旅も退屈してた所だし、丁度いい運動だわ」
「も~、キャロちゃんあと6日間は続くんだよ~」
「ナツメちゃん大丈夫?」
「私、乗り物ダメかも」
この危機的状況にを全く感じさせないマイペース感を発揮しながら、ルリ達は降りて来た。同じ馬車に乗ってた父さん達は、窓からこちらに向かって手を振っている。どうやら俺達だけでやれって事らしい。
「な、何でそんなに呑気なの!?」
「皆さん、危険だから逃げる準備をしてください」
ルリ達を見て、あまりの気の抜けた感じにランさんは驚き、パンジーさんは逃げるように誘導する。だがルリ達は何故驚かれていて、逃げるように言われているのかを全く理解していない。
「シオン、一匹は任せていい?」
「俺とルリで一匹ずつだろ。もう一匹は?」
「私とシャロちゃんでやるわ」
「じゃあ、私は被害が出ないようにここで待っているね」
そう言いながら、各自武器を取り出す。ナツメも乗り物酔いでぐったりはしているが、周囲の警戒は怠っていない。
「まて、シオン君達!いくら知識があっても無謀だ!って、え?」
ランさんが止めようとしたが、事はすでに終わっていた。シャロが〈
あまりの非現実的状況にフローズンのメンバーはただ呆然と眺める事しかできなかった。
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