余裕をかましてた奴の秘密を暴く

訓練場につきアギラードさんと向き合う。今回はルリ、ベル、ヘラの3人しか観戦者がいなくて、ギャラリーが少し寂しくなっている。

それにしても、移動中からアギラードさんはずっと顎に手を当て考え事をしてるように見えた。


「アギラードさん、さっきからどうしたんですか?」


「いや、私は考えたんだが、そもそも長年生きてきた私が、まだ13年しか生きていない君と本気で決闘するのも無理な事だなと思ってね」


まぁ確かに普通ではないだろう。経験豊富な人が経験の少ない人に負ける事はない。それは決闘以前にすべての事で言えると思う。


「一応この学園のシステムの中で君はルリ様より上にいる。これで一応だがルリ様より上である事は証明できる。だからと言って私が満足するわけでもない。と言う事でだ。その間私の攻撃を見事耐え抜けば認めてやろう。もちろん君から反撃できるなら、しても構わない」


最後に「フッ」と少しキザに笑って俺を見てくる。正直、物凄く腹が立つ。俺は秘かにこの人を倒そうと決意した。


「話したい事は話したし、私から行かせてもらうぞ」


直後〔縮地〕で距離を詰めて攻撃してくるアギラードさん。もちろん俺も構えていたのでそれを全て捌いていく。正直、速さも、一発の重さもかなりの物だったが、そこまで慌てるものでもなかった。

アギラードさんは武器などを使っておらず、自身の鍛え抜かれた体を武器にして戦う、格闘家タイプの人だった。それに対して俺はいつも通り剣を持って対峙していた。




「シオン様って本当に何者なんです?」


「すごいわ、あのアギラード様と互角に渡り合うなんて。流石勇者を沈めるだけの事はあるわ」


遠巻きでシオン達の決闘を見ている、ベルとヘラは改めてシオンの実力を認識した。そもそもベルとヘラにとってアギラードは、どんなに小細工しても、絶対に勝てない人であって、絶対的強者であるのだ。

そしてその人が、まだ本気を出してないからって、それと渡り合うシオンも2人から見れば強者なのである。


(確かに今はシオンとアギラードさんは互角に見えるけど、アギラードさんは何かを隠してるように見える)


ルリはシオンの能力を知ってるだけに負けるとは思っていないが、明らかに何かを探ってるアギラードにも気づいており、どうなるのかは分かっていなかった




攻防が5分を経過した頃、アギラードさんが俺と距離を取り、構えをといた。


「お見事、まさか私と5分間もやり合えるなんて。最近はここまでやり合える者もいなかったからな。だが、ここからが本当の決闘だ!せいぜい楽しませてくれよ」


言い終わった瞬間、〔縮地〕で俺の前に来て左で殴るように見えた。それに反応して避けたと思ったら、何故か右から衝撃が来て少し吹き飛ばされてしまった。


「まさか、攻撃を食らうとは思ってもなかっただろう?今まで避けられたりしてたが、次から君はもう避けられない!」


そこからはまさに防戦一方だった。俺は全ての攻撃を捌いたと思っていたが、なぜか別の方向から攻撃される。〈未来予知〉を使って、アギラードさんの攻撃を先読みしていても、全て無駄だった。


「ほらほらどうした、少しは反撃してみなよ!」


アギラードさんは、どんどんスピードが速くなり正面からの攻撃も捌くのかなり厳しくなってしまった。


(何故だろう、絶対に前から来る攻撃は捌けてるのに、別の方向からも攻撃がくる。これはもしや...)


俺の中である疑問が生まれた、それを証明するために〈未来予知〉の対象をアギラードさんから、俺に変える。

そして俺の疑問は確信に変わった。

真正面から来る攻撃は確実に捌けた、だが俺の死角の位置からのアギラードさんが攻撃を仕掛けるのが〈未来予知〉で見え、それをかわして距離をとる。

かわされるとは思ってなかったのか、俺が元いた場所に2人のアギラードさんが立っていた。


「不思議だったんですよ、全て捌けているはずなのに、何故か攻撃を受ける。目の前のあなたは避けられると分かっていながら、フェイントもしてこない。そこで思ったんです。もしかしてもう1人いるのではないかと?」


俺の説を聞いた、アギラードさんは一瞬ポカンとしたが、すぐに笑い始めた。


「フッ八ッハッハ、まさかその考えに至るなんて。いやぁお見事、大体の者はそこまで気づかないんだけどな」


そう言いながら、指をパチンと鳴らす。すると1人のアギラードさんは音もなく姿が消えてしまった。


「君を攻撃したタイミングでもう1人の私は消していた。だから君は1人の私しか見えないと思ったんだけどね、本当にお見事だよ。時間もそろそろ10分だし、君の力も十分に証明してもらった。この辺で」


「ちょっと待てよ」


俺は話してる最中のアギラードさんの言葉をさえぎる。当然アギラードさんはいきなり何かといぶかしむ。


「俺は、あなたに一撃もまともに入れられてないのに、何勝手に終ろうとしてるんですか」


そうなのだ、俺はカウンターなどを狙い、攻撃はしているが、それは全て捌かれてしまっている。

満足に一撃も当てられないのに、終るなんて、俺が許せない。


「そうは言うが、シオン君は何もできないだろう、捌くスキルは確かに高いがそれ以外はそうでもない。ここで終っておけば、余計な恥も掻く必要はないだろう」


もうやめるように促してくるが、俺はやめる気などない。それを見かねてかアギラードさんも改めて構えなおした。


「言っておきますが、俺だってまだ手はあるんですから。手始めに〈身体強化〉」


ここまで俺は自己強化は〈未来予知〉しか使ってなかった。そしてまだまだ自己強化の魔法はある。


「次は俺の番です」


ここから俺の時間が始まった。









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ヘラ「アギラード様も素敵だけど、シオン様も素敵かも」


ルリ、ベル「「え」」

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