第21話 遣らずの雨

帰らないで

もう少しだけ、いて

もう何度も、唱えた


それでも、あなたは席を立つ


もう少し、いればいいのに


口パクで、あなたの背中に言ってみる

それでも、あなたは爪先を靴に滑らす

ドアを開け、出ていった


「あ、」


あなたの小さな声が聞こえた

願望だろうか

ドアを開け、のぞいてみる


「雨だ、」


頭を掻いて、苦笑


……アメガ フッテ キタ カラ……


……カエラナイデ……


雨が言っている


「もう少し、いたら」


やっと声になった

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