43話:2章 師匠覚醒(主にエロい方向で)

 窓から差し込む陽の光と、気怠い倦怠感で目が覚めました。

 太陽はかなり高くまで登っていて、もうお昼が近いと把握できます。


「うう、昨日は凄かったのです……」


 昨日は浴場で数回『致した』後、部屋に戻って夕食までイチャイチャネチャネチャと堪能しました。

 ちなみに風呂場のイーグは、師匠に問答無用で窓から放り出されてます。

 『竜の血』で強化された師匠の体力は、それはもう凄まじく、その後、腰の抜けたわたしを抱えてディナーを摂り、早々に部屋に戻って気を失うまでもてあそばれたのです。

 『抵抗の指輪』の効果か、師匠も理性を失うこともなく。いや、あれはすでに失っていたというべきでしょうか?

 とにかく、普通(?)にわたしを可愛がってくれました。


「日付の変わる辺りまでは意識があったのですが?」


 下腹の辺りは、昨夜の無茶で未だに鈍い痛みと違和感が残っています。

 まったく、師匠も無茶して。


「ハッ、師匠無事です……ぶぎゃ!」


 あれだけ長時間無茶して無事なはずないのです。慌てて体を起こし、師匠の無事を確認しようとして……ベッドから転げ落ちました。

 腕はプルプルと震え、足腰は完全に抜けて、力がまったく入らないのです。


「ぐ、ぐぬぬぬ」


 かろうじてベッドに這い上がって見渡してみると、誰も居ません。

 居ない、ということは無事なんでしょうか?


「ひとまずは安心、ということでしょうか?」

「おはよう、ユーリ。もう起きたのか?」


 一息つくと同時に背後でドアが開く音がして、師匠が戻ってきました。


「おはようございます、師匠。ドコ行ってたんです?」

「それより身体は大丈夫か? もう昼だから、宿の朝食は無いので屋台で軽く買ってきておいたんだ。後で食べなさい」


 まるで何事も無かったかのように、いつも通りの対応をする師匠。なんだかモノ足りません。

 こう、『オハヨウのちゅー』とかある物じゃないんですか?

 ベッドの上に這い上がり、身体をシーツで隠しながら、少しふくれっ面になってしまいます。


「むぅ、わたしは大丈夫ですけど、師匠はどうなんです? 神器の効果とかあったし……」

「ああ、思ったよりこの『指輪』が効果を発揮してくれたようだな。とりあえず最後まで理性を保つことはできたぞ」

「あれ、『理性を保った』うちに入るんですかね?」

「う、まぁ、ヤリ過ぎたのは否定せんよ。それに三時頃かな? それくらいで限界が来て指輪が壊れてな」

「大丈夫だったんですか!?」

「うむ、かなりアブなかった……壊れた瞬間、背骨が引き抜かれるような快感が走ってな。慌てて中断したんだ。『竜の血』の効果を受ける前だったら間に合わなかった」


 師匠でも耐え切れませんか、これは『抵抗の指輪』は必須ですね。

 それにしても、なぜ師匠が物問いた気な表情でこっち見てるです?


「ユーリ、その……まだ『師匠』なんだな?」

「あ。やっぱり、名前で呼んだ方がいいでしょう、か?」


 名前で呼ぶ……そう考えただけで、何か耳の辺りが熱くなった様な気がします。


「え、と……ハスター、ル」

「うん、そっちの方が嬉しいな」

「これはちょっと……ハズカシイです」

「すぐ慣れるさ」


 ハスタールはわたしの傍に座り、熱くなった耳に軽く口付けします。


「あっ! だ、ダメですよ! 指輪が無いから、この先は『お預け』なのです」

「そういえば、そうだったか……でも、お前になら溺れてもいいな」


 何かハスタールが恥ずかしいこと言ったので、茶化して誤魔化しましょう。会話の主導権を奪還せねば。

 ベッドの上に座り、全裸にシーツを体に巻きつけ、軽く髪をかき上げて挑発します。できれば、生前に見たかったポーズですよ。


「ダメですって。いやー、庵に帰るまでお預けなんですね。残念ですねー」

「……そうだ、ユーリ。これを見てくれないか?」

「す、すごく、大きいです……?」

「何を言っているんだ? とにかく、さすが鉱山の街だな。銀を削りだした指輪とか、探したらボロボロ出てきたぞ」


 ジャラジャラと20個ほどの銀の指輪をベッドに広げる彼。

 これは?


婚約指輪エンゲージリング、です?」

「それだったら何で二十個も用意してるんだ? 『精神抵抗の指輪』の材料だ」

「まあ、わかっていました。けど、この街で店でも開くつもりです?」

「まさか。この指輪はな……お前をとことんまで堪能する為に買ってきたんだ」

「ふぇあ!?」


 ニタリと、珍しく邪悪な表情を浮かべるハスタール。

 く、喰われる! いやすでに喰われましたけどっ。


「すでに魔法陣も焼き付けてある。あとは魔力を充填するだけだが、その作業はユーリの方が早いだろう?」


 ちょ、二十個はありますよ? 昨日の指輪でおよそ十二時間耐えたので……まさか……


「これだけあれば、十日は休み無しでいけるな。昨夜は途中で止めたから、ちょっと辛くてなぁ」

「なななな何を言ってるですか! そんなことしたら、わたし死んじゃいますよ?」

「ユーリだと、その心配が無くていいなぁ。『竜の血』が効きすぎて、ちょっとキツイんだ。持て余してた若い頃に戻ったみたいな感覚かな?」

「なに鬼畜なこと言ってるですか! わたしだって死にますよ、生き返るだけで!」

「うん、死ぬほど気持ちよくしてやろう」

「昨日で限界です!」

「……ダメか?」


 そ、そんな捨てられた子犬の様な目で見つめられても……妥協しないんですからね!


「やります」


 ――断れるわけ無いじゃないですかぁ。


 こうしてわたしは、自分を責め立てる為の道具の作成に手を貸したのでした。



「あうぅ、ハスタールはケダモノなのです」


 あれから夕食までひたすら責められ、気絶と覚醒を繰り返し、全身が脱力し、腰の抜けたわたしはハスタールの膝の上で夕食を食べさせて貰い、店の人に微笑ましそうに見守られながら、部屋に戻ってきました。

 それと、この部屋にお風呂があってよかったです。でないと夕食前に、ベチョベチョの大惨事の姿で大浴場まで、人目を忍んで行かなければならないところでした。


「なにを言ってる。今からが本番だぞ?」

「女の子って予想以上にキツイのですよ」


 部屋に戻ってベッドの上にポイと放り投げられ、ハスタールがし掛かって来ます。

 この身体になって、初めて『事に及んで』いるわけですが……こう、乱されて、貪られて、堕とされる感覚に振り回されています。

 男の時はなかった感覚ですね。

 まだ、そういうのが楽しめる身体では無いのですが、それでもキチンと対応で来ている辺りは凄いというか、不思議というか。

 身体を這う、彼の手がとても心地よく感じられます。


「ふぁ……あ、ハスタールが相手なら、無理矢理でもきっと堕ちますね」

「そうか、じゃあ試してみよう」

「ふむっ!? んぷ……ぷはっ」


 いきなりディープな感じのキスをされ、混乱で手足をばたつかせます。抵抗にすらなりませんが。


「いきなりヒドイですよ!」

「いきなりじゃないと無理矢理感が出ないだろう?」

「思春期の青少年じゃないんですから、もうちょっと余裕を持って迫ってくださいよ」

「多分精力はその当時の数倍以上になってる。正直もう自制ができんから、覚悟してくれ」

「ひぃぃぃ!」


 睦言中の女性としては、あり得ない悲鳴を上げて、後退あとずさりします。

 これじゃ『抵抗の指輪』使っても、同じじゃないですかぁ!


「ふふ、ユーリの身体の具合が良すぎるのがいけないのだよ」

「神器の効果ですよ、それ!」

「確かに。わたしに幼女趣味は無かったはずだからな」

「ほっといてください。悪かったですね、ツルペタンで!」

「俺はユーリが相手だったら、どんなでも興奮できるよ。体型とかオマケみたいな物だな」

「わたしが男でも、ですか?」


 聞いても無駄な質問です。でもやっぱり気になるのはあります。

 あと、一人称が『俺』に戻ってる辺り、かなり切羽詰ってるのかもしれません。


「そんな仮定には意味が無いだろう?」

「例えば、ですよ。例えばわたしが男だったりしても?」

「その時は多分、自分が同性愛者かどうかで、もっと悩んでいただろうなぁ」

「それはつまり?」

「たとえお前が男だったとしても、『お前を愛してしまう』という事実には変わりが無い、ってことだよ」


 その台詞にゾクリと痺れが走ります。背筋に、下腹部に、そして脳に。

 髪を撫で、首筋に触れる手の感触ですら、ビクビクと反応してしまいます。


 ――もうダメだ……耐えられない。


「わたしも……きっと同じだったのです」


 そう囁き、わたしはハスタールの首に抱きつき、貪るように口付けをしました。

 その夜、わたしは時間の感覚も、人としての思考も無くなる程、乱れました。

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