あたしが大黒柱
七瀬渚
プロローグ
ウェルカムスピーチ〜態度デカくてわりぃな!〜
昔から喧嘩っ早くて高校のときには停学寸前という程の騒ぎを起こしたこともありました。勉強はそこそこ出来る自信があったんですけどね、だからあぐらをかいてたっていうのもあって、夜遊びしたり校則破ったり……まぁアレです。元ヤンってやつですよ。
男を泣かしちまうことだって少なくなかった、そんぐらい勝気でしたからね、社会へ出てから改めるのはなかなか大変でした。だけど根性だけは誰にも負けないと思ってた訳で、あたしは持ち前の要領の良さも生かしてそれなりに昇進もしてきたんですよ。
婚期は間違いなく逃すだろうって、同僚たちからはよく笑われてましたわ。あたしも自分が献身的な主婦になる姿なんて想像できませんでしたねぇ。
しかし聞いて驚いて下さい?
こんなあたしにも大切な人が出来たんです! なんとこうしてね、めでたく結婚まで漕ぎ着けたんですよ。いや〜、人生わかりませんねぇ。
彼は今まで付き合ってきたどのタイプとも大きく違っていました。
まず年下。6つ離れています。年上なら10離れてても20離れててもイケる! とか思ってたんですけど、まさかこっちとはね。何も言わなきゃ弟にしか見えないってさ。
あと性格。こいつメチャクチャ甘えん坊だ。その上よく泣く。昔のあたしだったら鉄拳食らわしてたね。
体格は色白でひょろひょろ。あんま食べないんですわ。胃腸弱くてね。強風が吹いたらヒラヒラ〜って飛ばされやしないかと心配なくらい。
まぁこれ聞いただけでもあたしとは正反対だとわかりますでしょう? あたしもこんな男は初めて。そんな中でも一番、自分とかけ離れているのが……
夫はな、よくイヤーマフで耳を塞いでるんだ。いっつも音に怯えているんだ。これをしてないと
夫はな、外で働けなかったんだ。音が怖いっていうのもあったし、人の顔を見るのも苦手だ。職務経歴書なんて書かせたら1枚じゃ足りないだろうよ。それくらい何処にいっても適応出来なかった。
夫はな。
ほとんど喋れなかったんだ。調子の悪いときは自分の声さえうるさく感じるんだって。
だけど見た目はちょっと貧弱なくらいであとは普通〜の男なのさ。
あたしは誰よりもこいつを知りたいと思った。だから家族になって、あたしが大黒柱になるって決めた。
それヒモじゃん! って言った奴……あはは、そういや過去に居たな。
……冗談じゃねぇぞ、あぁん?
あたしがどんだけこいつに支えられているか教えてや……いえ、お教え致しましょう。しばしお付き合いの程、宜しくお願い致します。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます