恋占い


 さて、最後の清水寺ですが、ここはヴァランちゃんのたっての願いで、本殿のすぐ北側にある、地主神社がメインになっています。


 やはり女の子ですから、縁結びの神様のほうが、清水寺の千手観音様より、優先されるのでしょう。


 『恋占いの石』ですね。

 目を閉じたまま二つの石の間を歩き、無事にたどり着けば恋は成就する。


 10班の一人が挑戦しています。

 二度目でなんとかたどり着けました。

「すこし遅くなるってことね」

「えっっっ!」


「でも願いがかなうという事ですよ」

 引率の先生が、ホローしてくれています。


「そうよ、私よりも早いじゃない、私は三回目よ!」

「ヴァランちゃんの番よ!」

 促されてヴァランちゃんが挑戦すると、一発でたどり着けました。


「ヴァランちゃん、すごい!」

「当然よ!これで神様は私の恋を、祝福して下さるのよ!」

 大満足のヴァランちゃんでした。


「明子ちゃんの番よ!」

「えっ、私、怖いわ、たどり着けなかったらどうしよう……」

「大丈夫、成就するわよ」


 明子ちゃんは目を閉じ、おずおずと歩み始めますが、あっちへ行くかと思えば、またこっちへ、そして徐々にコースを外れ始めます。


 見かねたヴァランちゃんが、

「明子ちゃん、右へ!」

 と声を掛けました。

 する明子ちゃん、コースを修正しましたが、今度は修正しすぎです。


「こんどは右に寄りすぎ!左へ、そうそう、そのままよ!がんばって!」 

 ヴァランちゃんのアドバイスで、なんとかたどり着いた明子ちゃんでした。


 先生が、

「なんとか恋は成就しそうよ、でも人の手助けが必要らしいわよ」

「そうなんですか!」

 と、明子ちゃん。


「ヴァランちゃん!アドバイスしてね!」

「いいわよ、私の知っている事は、全て教えるわ!」

 なんか危ないですね……


「ところで先生は、しないのですか?」

「私?先生はもう決まった人がいるの、成就しているからいいの」

 キャーなんて声が出ましたね。


 あとは生徒たちに、根掘り葉掘り尋ねられる訳です。

 大変ですね、先生も。

「さて、そろそろ駅にむかいましょうね、運転手さん、お願いします」

「もう帰るの!」


「さあさあ、また今度は、お父さんお母さんに連れてきてもらいなさい」

「ところで浮田さん、そんなにお土産買って、どうするの?」


 明子ちゃん、お土産を大量に抱えているのです。

 どうやら縁結びのお守り以外は、お菓子ばかりのようです。


 京都駅につくと、皆は山のように荷物を抱えて集まっていました。

 わいわいがやがや、そのかしましい事、先生たちに怒られていますよ。


「ねぇ、新幹線の中で、生八つ橋食べない、ヴァランちゃんと食べようと、多めに買っておいたの」

「ヴァランちゃん、あまり和菓子は買っていなかったみたいだし」

 

 帰りの新幹線の中で、二人は生八つ橋など食べながら、明子ちゃんが、

「ヴァランちゃん、ホテルで色々教えてくれたけど……」


「皆することなのよ、恥ずかしい事じゃないのよ、京子さんも多分、教えたことは経験されているわ、私も経験済みなの」

「でもね、嫌なら美子姉さまは強要されないけど……」


「そういう意味じゃないのよ、私の恋はヴァランちゃんの手助けで成就するのよね、これからも手助けしてね、私、愚図だから……」


 明子ちゃん、新幹線に乗っていますが、心は宇宙鉄道に乗ったようですね。

 遥かに広がる世界の扉を、自ら開くつもりになったようですね。


 後日譚になりますが、以来二人は怪しいと、評判になりました。

 なんせ一緒にお風呂に入り、互いの背中を洗い、一緒の布団に入ったりしていますからね。


 しかもヴァランちゃんは、幼いころからフランソワーズさんに、美子に奉仕するために、英才教育を徹底的に受けており、その夜のノウハウを、そのまま明子ちゃんに教えたりしています。


 かなり怪しげな雰囲気が、漂っていたりしています。


 はたから見ると確実に『百合』です。

 まぁ真実ですけどね。

 相手が違うだけで、もっと変態の『百合』です。

 

 FIN


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