根暗が、叶わぬ恋で瞬きの夢を見る
働気新人
第1話 出会い
学校が終わり、バイト前の少しの時間でタバコを吸えるだけ吸うのが俺の習慣。
校舎から一度でて横にある駐輪場の奥にある喫煙所に向かう。
珍しくこの時間に話し声が聞こえる。誰かいんのかな?
七部丈のジーパンからタバコを取り出し、白いシャツの胸ポケットから銀色じっぽを取り出しながら喫煙所に向かう。
ひょこっと覗くと茶髪っぽい若い女性と、先生が二人談笑していた。
「お疲れ様で〜す」
「あ、お疲れ様です」
俺声ひっく! 緊張しすぎだろ。さすが人見知り、しかも女性だし、なおさら緊張する。
髪先緑っぽいな。しかも可愛い系の美人。去年から喫煙所の常連客だけど、見ない人だな? もしかして学生か?
気づくとその女性ばかり見ていた。タバコに火をつけながら誤魔化すように煙を蒸す。
4、50代の女の先生とその女性の話に耳を傾ける。
「そう言えばあんまり喫煙所で見ないよね? 最近吸い始めたの?」
「そうなんです! 私、昨日から吸い始めたんですよ! 二十歳になったし、内側から体壊すために、よし! タバコ吸おうって思って!」
「え!? ま!? 昨日から!? お前学生!?」
思わず会話には入ってしまう。これでキモいやつとか思われないよな。こんなメガネのキモい奴が声かけたら流石に引くだろうなぁ。
「そうなんです! 昨日からです!」
テンション高いなこの子!? めっちゃいい子!! しかもさっきなんか重たいこと言ってなかった!?
黒いジャケットからピアニッシモのピーチ1mgを取り出してドヤ顔になる。
どことなく闇感じるなぁこの子。言葉にしづらいし、俺の感覚だけど。
「マジか、めちゃめちゃタイムリーやん! あ、俺の名前、真冬っていうからよろしく。ここの学生で、小説書いてるんだ。これからヤニ仲間として仲良くやってくれい!」
「え? 学生!? え、え!? 学生なんですか!? あ、青って言います!」
「敬語なんてやめやめ、俺一回就職して、この学校きてっから年上だけど、同級生なんだから、タメ口でいいよ」
タバコを吸いながら軽い口調で話す俺キモいな。俺がこんな奴に声かけられたら殴る。
「で、ですよね!? あ、だよね!! 同い年に見えない、なんなら先生かと思っちゃった!」
青がテンションマックスで体を上下に揺らす。笑顔がとても可愛い。小動物みたいで、庇護欲? を掻き立てられるような子だな。
「そんな老けてっかな? 先生、俺そんな歳食ってるように見えます?」
「んー、真冬くんは老けてるっていうか、大人っぽいだけだと思うよ?」
「うん! おしゃれだしすごい大人っぽい!」
褒められ慣れてないからすごい恥ずかしい……。
「そうだ、明日の球技大会って真冬くるの?」
ん? ああ、あのクソだるい奴か。言ってもタバコ吸って野次飛ばして寝るだけなんだよなぁ。まあ、いくけど
「おん。いくで。クッソ面倒くさいけど。俺、ドッチビーだけだぞ参加するの」
「あ、私もバドミントンだけ! 一緒!」
「お前も一つ!? あーあ、一つだけなら行く意味なくね? 行きたくねぇ」
「それな! 動きたくないい!!」
わかる、わかるよその気持ち! 家で1日ダラダラしたい!!
あっ! 右手の時計を見て冷や汗が吹き出す。
「やべっ! バイトの時間なんでこれで!! 青? でいいんだよな! こんなおっさんと仲良くしてやってくれ!」
PCなどを入れた肩がけのカバンを担ぎ直し、早足で立ち去る。
「おう!! 真冬もこれからおいちゃんと仲良くしてくれい!!」
「まかせとけ!!」
手を振って別れる。バイト行きたくねぇ!! でも、あんな可愛い子と知り合えて良かった! なんか闇深そうだけど、楽しくなりそうだな。
あんな子と付き合えたら幸せなんだろうなぁ。かなりオシャレな子だったし、俺なんかじゃ無理だな。ブサイクには厳しい世の中だ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます