目が覚めて ④

 ”諦めるなっ!!”






(えっ??)




 私の脳裏に突如響き渡る声。




 それは、彼氏の声だった。




 私は、過去何度となく ”諦めるなっ!” と、いう言葉を彼に掛けられ続けていた。







―――――


「⋯⋯なぁ。おめぇ、なにかに付けて諦めるのはえ~よ!!」



「えっ?⋯⋯だって、できないんだもん!」



「⋯⋯だもんじゃねぇよ!

始めっからできる奴なんていねぇって!!

できねぇんなら、できるまでやってみなよ!!

教えてやっから!!

まったく、すぐ諦めやがってっ!!」



「できないんだから、やってくれればいいじゃん!!

もぉ~、冷たいなぁ!!」



「いや⋯⋯だから~冷たいとかそういう問題じゃなくって、オレとか助けてくれる人が回りにいなかった時、一番困るのはおまえなんだぞ!!

だから、簡単に諦めんなっ!!」



 諦めんなっ!!



 諦め⋯⋯




―――――――




(⋯⋯んな。


あき⋯⋯ら⋯⋯


諦め⋯⋯⋯⋯)




 ”諦めんなっ!!”





「ッツ?!」




(うん。

そうだね。

私、諦めない。

こんなとこで⋯⋯終わりたくない)




 私は『キッ!!』と決死の目で玄関を見る。



 すると、玄関の横の壁に赤枠に囲まれたボタンが目に入った。



(非常⋯⋯用⋯⋯ベル??)




 あれ⋯⋯あれさえ⋯⋯⋯⋯



 ⋯⋯あれさえ鳴らせれば⋯⋯




 這いながら



 それでも、少しずつ少しずつ確実に出来る限り早く進んだ。




 振り返らない。



 泣き言は言わない。





 そして、諦めない。





 ただただ、目標に向かって突き進む。





(⋯⋯着いた。

あとは、押すだけ⋯⋯)



「⋯⋯ぅう。っくぅ~!!」






 ジリリリリリリリッ!!




(やった! お願い。誰か⋯⋯誰か来てっ!!)




「いや、違う⋯⋯まだ、

まだ、終わってない。

頼っちゃダメ。

ここから、出なきゃ。

諦めちゃダメ。諦めちゃ」




 ガチャ!!


 玄関の鍵を空けたその時⋯⋯




 ガシッ!!




「えっ??」



 ズルズルズルズルズルズルッ!!



「いやーーーーーーッ!!」





 両足を掴まれ、俯せのまま一気にリビングまで引きづられていく私。



「いやっ!!離してっ!!

ぃやだぁ!!」





 ガシッ!





 ガシッ!





 ガシガシッ!!






 “それら” は、ばたつかせ必死に抵抗する私の両手両足を押さえつける。


 手の空いてる最後の “それ” が背中へと飛び掛かってきた。




「ぅぐっ!

ゲホッ!ゲホッ!」



 後頭部から髪を鷲掴みにされ頭をグイッと起こされる私。



 これからされる事を見ろと言わんばかりに。




「⋯⋯いやっ!

やだっ!!」



 開かれ⋯⋯





「うッ⋯⋯ぅうう。」





 伸ばされ⋯⋯





「⋯⋯ダメッ!!

そこは⋯⋯お願い⋯⋯

やだっ!

やめてっ!!


イヤーーー--------ーッ!!」





 一気にっ!!







 ズシュッ!!



 視界に閃光が走ると同時に、激痛で全身が跳ねっ返る。


 しばらくビクッビクッと痙攣を繰り返す私。


「ハッ⋯⋯ハッ⋯⋯あぐっ⋯⋯

ッッ!!ッツ⋯⋯った⋯⋯い⋯⋯」





 吹き出す自らの鮮血を見せられながら、徐々に意識が遠退いていく。



(⋯⋯⋯⋯君。

わ⋯⋯わた⋯⋯し


諦め⋯⋯なかっ⋯⋯た



最後まで⋯⋯諦めな⋯⋯)




⋯⋯⋯⋯⋯⋯。




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