第41話 第三章 知りたいとは思いませんか、文明がどこから来たのか。(22)

【同日 午後八時五十分 神保町 紅茶専門喫茶『TADANO』】

 内田少佐がアメリカ軍と密談をしている頃、近くの紅茶専門喫茶では、ふたりの西洋人女性がテーブルを囲んでいた。

 この喫茶店は夜十一時近くまで営業しており、店内はまだまだ盛況だ。

 ふたりの西洋人とは、クーリア・ロマーナのヴィットーリア・フォン・ツァイツラー枢機卿とエレオノーラ・サネッティ司教だ。

 ふたりともトップスはベージュのシャツで、スカートは白のタイトスカート。

 当然の如く、シャツの袖口には『教皇の三重冠と天国の鍵が交わる紋章』が金糸で刺繍されている。

 ヴィットーリアは、ブロンドのショートカットに眼鏡が目立つ知的な綺麗系美女。

 対してエレオノーラは、癖のある赤髪のショートカットが印象的な活発系美女。

 神保町は、決して外国人が珍しい街ではないが、異なるイメージを与えるふたりの美女は、喫茶店の中でもかなり目立っていた。

 ふたりは立ち聞きを恐れ、基本的にはラテン語で会話をする。

「ねえ、エレオノーラ。もう回っていないところは無いかしら? サイゴーの生活圏はくまなく押さえたいのよ」

 ツァイツラーは、大好きなブレックファースト・ティーをストレートで嗜み上機嫌だ。

 この紅茶屋はかなり優秀だ。いい店を見つけたわ。

 紅茶好きの彼女は目を細めている。これなら日本への出撃も悪くない。

 店内に置いてあるチラシを見ると、セイロン直輸入と書いてある。あとで缶をいくつか買っていこうかしら。

 一方のサネッティは、生粋の最前線指揮官であり、近接戦闘や威力偵察などが得意技だ。

 当然各種機材の操縦にも長けていて、早くも日本の交通事情と右ハンドル車に慣れ、各地を実地検分に飛び回っていた。


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