第47話 不死鳥

「……第捌階位エイスだと……?」


流石に、男も驚いた様だ。

第陸階位シクスが使えれば強者。

第捌階位エイスは、宮廷の上級魔道士クラス……!

なお、第玖階位ナインスともなれば、国の筆頭魔道士クラス。


その隙を……逃さない。


「くらえええええ!」


レオの最大攻撃……重力魔法、第陸階位シクス四重詠唱カルテット

全身全霊の奥義で……決める!


かつん


渇いた音と共に、レオの剣が止められる。


絶対守護イージス


馬鹿だな、私……何も学んでいない。


スローモーションで。

周囲から突き出る、槍。

トラリオン将軍の部隊の……最も得意とする戦術。


槍が……レオを次々と貫き。

そして……


レオは、絶命した。


--


「え……」


スピカが、目を見開き、立ち尽くす。


男──トラリオンは、無表情で、愛槍を投擲する。


とさり


それはスピカの眉間に刺さり……スピカが地面に倒れ伏す。


残念だ。


隙を見せず、防御に徹すれば、もう少し骨が折れただろうに。


この猫も、この兎も、決して弱者では無かった。

平時、手合わせができれば、それなりに楽しめたかも知れない。


竜頭蛇尾、だが、勝利の可能性が有るのに勝負を楽しむなど、あってはならない事だ。


トラリオンは、戦いでは、常に相手を格上と考え、戦いに臨む。

特に、賤混者ハーフを狩る時は、相手を魔王とすら想定する。


最強にして堅実。

それがトラリオン……世界最強の声も高い、武王の生き様。


「他の者から報告は有るか?」


史学部の子供達。

それを全力で狩る獅子ども。


トラリオンは、できれば既知の少年──ルシフを相手にしたかったのだが。

希望は通らず、この2人がトラリオンの相手となった。

彼女らは……実力も、才能も、経験も……何もかもが足りなかった。


少年が生き残っていれば、是非相手をしたい。

決して口にはできないが。


「いえ、まだ有りません」


魔導士が告げる。


トラリオンの部隊は、練度が高い。

全員が第陸階位シクスの魔法を操り。

第捌階位エイスを行使する者も2名いる。

世界最強の集団。


神盾騎士団。


ロマニアを滅ぼす……絶対の意思が働いた結果の出動。


?!


違和感を感じ取り、トラリオンが向き直った先……ゆっくりと起き上がる……スピカ。


何……だと……?


「な……何だ?!」


部下が……叫ぶ。


ゴッ


別の部下が投擲した槍、それを、


「護れ……浮遊する盾ラピュタ


スピカの産み出した光の盾が……弾く。


馬鹿な……地属性魔法、第拾階位テンスだと……?!

学生のレベルでは無い……

これが……賤混者ハーフ……


いや……


トラリオンは、気付く。

起き上がった、意味。


口の中が……乾く。

声を……漏らす。


「まさか……不死鳥フェニックス……」


「将軍、何かご存知なのですか?!」


「ああ……聞いた事が有る……火属性の……第拾弐階位トゥウェルフス


どよっ


部下が、どよめく。


四属性魔法は、決して華々しい魔法ではない。

第拾階位テンスともなれば、相当強いが……


だが、それより上、となると、話が変わる。

四属性魔法のみに確認されている、第拾階位テンスを超えた魔法……第拾壱階位イレブンスは、それまでの不遇を払拭し、王座に輝き。


第拾弐階位トゥウェルフスともなれば、神の御業。


火は、再生の力……即ち、不死を体現する。

効果の続く限り、死からすら舞い戻る。


「殺せ……殺し尽くせ。魔法の効果は無限では無い」


トラリオンの命令に、部下達が次々に槍を繰り出すが……


当たらない!


右に、左に……紙一重に、槍の雨をくぐり抜け……


「この!」


神具による必殺の一撃。

スピカの腕に刺さり……


「癒しよ……母なる大海ポセイドン


スピカの身体を、無数の水の輪が取り巻く。

腕の傷が一瞬で再生する。


「馬鹿な……癒しの重ねがけだと?!」


トラリオンが戦慄する。


不死鳥フェニックスの唯一の攻略法。

その力が尽きるまで、ひたすら回復の力を使い切らせる……だが。

常駐型回復魔法を重ねがけされれば、当然、不死鳥フェニックスは温存され……


というか、母なる大海ポセイドンは水属性魔法の第拾階位テンス

火の第拾弐階位トゥウェルフス、地と水の第拾階位テンス……この少女は……底が知れない。


謝罪しよう。

先程、侮った事を。


貴様は……俺が倒すに……相応しい猛者!

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