第20話 想像と創造
「ああ、すみません。勇者が実は魔王を倒していたら、とか、何故勇者は魔王と相討ちした事になっているのか、とか考えていました」
「有り得ないわよね?!」
「ええ、有り得ません。逆ならともかく……相討ちした、の方が本来は不名誉です。なら、デマを流す理由は有りません。なのにそうなっているという事は……」
ルシフは、低い声で、
「謀殺か?」
「それは考えにくいわね。勇者、リオン叔父様は第一王位継承者、特に貴族間の対立も無かったから。リオン叔父様の死は、万人を悲しませたわ」
リリーが否定。
「なら、外国かあ?」
「外国も、基本的には勇者様に感謝していた筈です。魔王の脅威は甚大でしたから……魔王を倒しても、四天王は2人残ってますしね。勇者様を謀殺する理由は無い筈です」
レオの疑問を、ディアナが否定。
「それに、うちの王家の目は節穴では無いわ。もしリオン叔父様が謀殺されていれば、真実は見つけ出していたでしょうし……そもそも、国民は国王陛下の告知で結末を知ったのだから」
リリーが苦笑。
「つまり、偽装の理由は考えられない、謀殺された可能性は低い……この方向から考える限り、勇者が魔王に勝って帰途についた、その可能性は極めて低い」
シリウスが結論つける。
「別の角度からアプローチする事もできますよね。当時起きた、不可解な事件を洗い出す、とか」
ルピナスが提起。
「当時起きた不可解な事と言えば、王により緊急告知された、ハーレム法くらいだな」
シリウスが苦笑。
「まあ……結局は、姉弟子の勘違い、なのだろうな。それでも、こうやって色々考えるのは楽しい……これが史学部、か」
ルシフが、そう言って、満足気に笑う。
こくり
リブラが微笑を浮かべ、ルシフを見て、他を見回す。
レオがきょとんとして、
「えっと……結局、まとめると……勇者は魔王に勝利したけれど、帰還の途中に不名誉な事が有り、死亡。国王はそれを隠蔽する為に、勇者が魔王と相討ちしたと発表。また、対策の為に急遽ハーレム法を作った?」
「気持ち悪いくらい繋げないで??!結局、勇者は魔王と相討ちになった、で結論したの!!外で言ったら流石に不敬罪や風説の流布で捕まる可能性も有るから!」
頭から湯気をあげつつ、レオが尋ねる。
リリーがツッコミ。
それぞれ挨拶をかわし、解散。
ディアナが、リブラに近づき、
「リブラさん、有難う御座いました。一時はどうなるかと思いましたが、うまく収めて下さって……」
「ディアナ様。こちらこそすみません。会長が変な事を始めなくてほっとしています。それに……史学部の特例扱いが解消して、悩みの種が1つ減りました」
「リブラさん、様はやめて下さい」
ディアナが頬を膨らませ、抗議。
「……すみません、ディアナさん」
会長より、よほど可愛気が有る。
リブラは、そう感想を抱いた。
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