第3話 主人公はぼっちじゃないです。友達います。エリートモブ程度(別作品参照)くらいです。
すらっとした体躯にボブカットの艶やかな黒髪を持つ長岡先生は、教師になってまだ数年の若い教師だ。優しい先生で、一部からは岡ちゃんの愛称で親しまれている。
かなりの美人で、密かにファンクラブができてるとか色々な話は聞くけれど、残念ながら詳細は知らない。
俺が知っているのは、俺たちが入学した去年、同じタイミングで赴任してきて、そのまま担任をすることになったらしいということくらいだ。
もしもファンクラブがあるとしたら、担任をするのが初めてなせいで時々失敗するギャップに落とされたと俺は睨んでいる。……いや、決して俺がギャップで落ちたから言っているわけではないからな?
……とまぁ、そんなことを考えているうちに帰りのホームルームが終わる。
「あれ? 詩音もう帰るの?」
「いや、まぁ翠みたいにやることないし帰るよ」
部活動に参加していない俺が特に学校に残る理由はない。
強いて言うならば、楽譜が完成していない時は放課後残って作るときもあるけれど、今日は完成した楽譜を提出しに行くから逆に早く帰らなければいけない。
「あ、じゃあ集めた数学の宿題を提出の手伝ってくれない? 一人じゃ少し重くって……」
「うーん……。帰ってからやることも特にないし良いよ」
「本当? ありがとう!」
ぱあっと効果音がつきそうなほど笑顔になる翠。翠はクラス委員をしているため、こういう仕事をよく任されている。
ちらりと持っていく数学の課題を確認すると、確かに多い。一人で持っていくには些か多すぎるような量だ。
もし俺が断っていたら……と言いたいところだけど、人気者の翠のことだから俺に断られても誰かしら人手を確保することはできると思う。
「よしっ! 行こう!」
「うん……って、俺の持つ量多すぎない?」
「詩音も一応カテゴリー的にはぎりぎり男の子なんだから良いじゃん!」
「俺ちゃんと男だけどね!?」
まぁ、確かに若干運動が苦手だったり筋肉が少なかったり男らしいと言えるような部分は少ないかもしれないけれど……これでも列記とした男である。
こういうことは幼馴染だから言い合えるようなことなのかもしれない。
☆★☆
「詩音じゃあね! また明日!」
「うん! また明日!」
本当にただ提出しに行くだけで難しいことは何もなかった。何かあったとすれば、翠の手伝いとしていつも居るせいで何の疑問も抱かれなかったことくらい。
グラウンドから聞こえる野球部の掛け声を背中に受けながら俺は帰路につく。
散りかけの桜を後目に、小さいころから見慣れた街並みを進む。
ショートカットになる城下公園をいつものように横切る途中、何かが聞こえてきた。
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