【未】5.淡く碧く

「深く息を吸って––– 吐いて」


冬の朝。ラジオをかこんでにぎわう広場。

僕はこごえる身体にむちを打ち、

ぐと伸びていた。


「もう一度息を吸って–––––


吸って–––

また吸って–––

さらに吸って–––––


"吐いて"の声が聞こえなかった。


酸素が体内にどんどんと取り込まれていく。

なか膨張ぼうちょうし、

やがて僕の足は地面から離れていた。


ふわふわ。ふわふわ。

みんな不思議そうに僕を見上げている。


ふわふわ。ふわふわ。

どこまでのぼっていくのだろう。

このまま宇宙までいくのかな。


街が一望いちぼうできる高さまで来た。

ちょっぴり早めにお天道様てんとさまへご挨拶あいさつ

なんとなく微笑ほほえんでくれた気がした。


すると僕の身体は少しずつしぼんでいき、

あっというに地面に着いた。

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