【未】3.おじいちゃんと私

「ねぇ、おじいちゃん。今日は何して遊ぶ?」

『ヒナや、もうかえりなさい』

おじいちゃんは真剣な眼差まなざしをこちらへ向ける。

「…やだ!もっといっぱい遊ぶもん!」

『困った子だねぇ…』


《–––時間だ。本日のしんを行う》

《目の前には視覚と聴覚を失った老婆がいる。信号を渡っているが、今にも赤に変わりそうだ》

《さて、どうする?》

蜃気楼しんきろうのようにぼんやりと現れた骸顔むくろがおが少女へと問いかける。


「…」

『ヒナ、どうするんだい?』

「………」


キキーッ ドンッ

トラックが先ほどの老婆をね、すぐに息を引き取った。


《今回も悪行あっこうか–––》

《また明日あす同刻どうこくに行う》

そう告げると骸顔は消えた。


『ヒナ…おじいちゃんはね、ヒナには良い子に育って欲しいんだ』

「やだ!やだもん!」

『……帰ろうか』

「うん!!」


祖父そふ、そして娘のヒナ。

二人は数年前に交通事故で亡くなった。

しかし、本来この交通事故では祖父の命だけを拝借する手筈てはずだった。

手違いによって"こちらの世界"へ連れてきてしまった少女。

特例として毎日行われる審で善行をすことで元の世界へかえす手順となっている。が…


「明日も遊ぼうね、おじいちゃん!」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る