ハジマリのお話

そろんば

【未】1.寒いからコタツで温まる話

「今日は一段と冷えるなあ」

学校の帰り道。寒空さむぞらの下、少年が呟く。

「いい加減コタツ出さなきゃなあ」

昨冬さくとうの終わりに押入れの奥にしまったコタツにおもいをせる。


–––––ガラガラ

少年は自分の家の戸をけた。

「ただいまー」

『おかえりなさい』

「なあオカン、そろそろコタツだしてくれよ」

『そんなに使いたかったら自分で出しな!』

「めんどくさいな…」

押入れにしまったコタツを引っ張り出すには、扇風機や夏服など邪魔になっている物をどける必要があった。

『オカンもめんどいの!それにコタツなんて出さなくても耐えられるわよ!』

「う〜〜〜ん」

耐えられは…する。

だが、このままだと今冬こんとうはコタツを使わず終える気もしてきた。

…だって今日は記録的最低気温だぜ?

「あーーーーーー!!!出すか!!!!!」

コタツ解禁宣言。声に出すことで自分を追い込む作戦だ。


ガタン ドカッ ドドドド…

「勘弁してくれよ…」

邪魔になっている物を引っ張り出したら、押入れの中のものがピタゴラスイッチ的に外へと落ちてきた。

「まあ後で片付けるか…今はコタツで温まろう…」

電源コードをし、コタツ布団ぶとんをかけ、温度を強にして足をうずめた。

「あぁ〜、あったけえ〜〜」

極楽だった。足先から脳天まで極楽が行き渡る。

「とはいえまだ冷えるな…潜って全身一気にあっためっか」

少年はゴソゴソとコタツの中にちぢこまっていった。


–––––ピヨピヨ

「は……?」

小鳥のさえずる声が聞こえる。

さっきまで肌寒はだざむかったと思えば、

今はポカポカに身を包まれていて、

辺りを見渡すと、そこはカンカンりの森の中だった。

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