第2話 目が覚めたら女の子になってた

俺は意識を取り戻し始めた。段々と意識が回復する。すると、周りの声が聞こえ始めた


「君、君は一体誰なんだ?」


「だ、誰?」


意識が戻った俺の目に入ったのは、クラスメイトの島村だった


彼は委員長で頭もいい秀才で運動神経もいい。このクラスの中心人物だ


「う、うん 」


目を移すと島村の隣には南遙がいた。クラス一の美人。


 島村とウワサのあるやはりこのクラスの中心人物。そして幼馴染


 彼らは俺の事が分からないらしい


「お、俺、高野だよ!」


話して、自分の声に驚いた。今の声!


「あ、俺、俺の声?」


「君、大丈夫か?」


「大丈夫?


 あなた、どう見ても女の子よ。俺って?」


「い、いや、俺、高野だよ。さっき教室から飛び降りた高野だよ」  


南の瞳が大きく見開く


 一瞬、静かになる。皆、理解したのだろう。性別が変わってしまったが、俺の正体に


「じゃ、君は高野君なのね? 」


南が目に涙をためて聞いてくれた 


「そ、そうだよ」


南は俺を抱きしめた。柔らかな身体の感触といい香りが気持ちがいい


「分かった。取り敢えず理解した。経緯を教えて欲しいが、体調は大丈夫か? 」


島村が冷静に状況把握を試みる


「だ、大丈夫」


俺は簡単に説明した。転生時の失敗で新しい体を与えられた事


俺達はこれから異世界に転生するらしい事


「い、異世界へ転生?」


「これ、アレじゃ無いのか?」


「モニタリング?」


「残念ながら違うわよ」


声が響いた


 そこには白い服を着た若い女性がいた


 いつからいたのか?


 全く分からない。さっきまではいなかった筈だ


「高野君の説明のおかげで、少し説明の手間が省けたわ


 そう、これから君達は転生する


 何か質問ある?」


「あ、あなたは誰なんですか?」


「私は施政官アリス。


 あなた達にとっては女神、の様な存在よ


 実際には違うけど、最もあなた達の定義にあたるのが、女神かしら。他に質問は?」


「何故、俺達は転生しなければならないのですか?」


島村が、質問する


「いい質問ね。答えは二つあるわ。


 先ず転生は転生先からの魔法による召喚に応じる為よ


 そして、何故あなた達なのかと言うと、


 あなた達があの東京という街のあの時、


 あの場所で最低の屑だったからよ」


「何故、俺達が屑なんですか?」


島村がくってかかる。秀才の彼には屑呼ばわりは承服出来ないのだろう


「クラスメイトに自殺を強要する事が罪で無くて何なの? 」


「それは、結果的にそうでしたが、俺は彼が自殺するとまで思って無かった


 無論、後悔しています。高野君がそこ迄苦しんでいる事に気がつかなかった


 あの時、俺は強く反省しました。多分、大半のクラスメイトがそうだと思います」


島村が釈明する。はは、みんなにとってはそんな物だってのか?


 俺は涙が溢れてきた


「そ、そうだよ。俺だって、本当に飛び降りるとは思わなかったんだ


 本当だ。冗談のつもりだったんだ。俺、そこ迄悪人じゃ無い、悪人じゃないんだ」


 いぢめっ子の須田が泣きそうになり訴える。俺は少し安堵した


 死んでもいい気味だと思われたら流石に辛い


「貴方達、高野君の顔を見てもそう言えるの?」


みんなの視線が俺に集まる


「「「「た、高野」」」」


みんなはっと俺の顔を見る


 南が叫ぶ


「ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい」


南は半狂乱になっていた。俺の涙に気付いたからだろう


「私、何もしなかった。止めようとしなかった。許して。お願い」


須田の仲間の林が呟く


「俺だって、本当はちょっとかわいそうだと思ってたんだ。でも、言い出せなくて」


委員長の島村の言う事も、俺をいぢめた張本人の須田達の言う事も本当の事なんだろう


 気軽な気持ちでいぢめて、彼らに俺の絶望や孤独感は分から無かったのだろう


「高野。すまん」


大声で俺に謝るやつがいた。それはかつての俺の親友西野だった 


「俺はお前を見殺しにした。親友なのにお前を見殺しにしようとした


 俺が一番罪深いのかもしれない」


「ああ、そうだよ。お前に見捨てられた時、俺は死ね事を決意したよ」


俺は冷たく言い放つた


「すまん」


西野は涙を流しながら謝った


「まあ、後の事は次の転生先で折り合いを見つけてくれるかしら?


 手続きを進めたいわ」


「手続きって?」


「あなた達はこれから救世主として異世界に転生するわ


 もちろん、普通に転生したって救世主にはなれない


 あなた達には救世主になる為、1人1個特別なスキルを授けるわ


 あなた達はそのスキルを使って転生先で救世主となって」


「「「「「救世主?」」」」」


みんな、同じ質問をした


「そうよ。人類の敵、魔族と戦ってもらうわ」


 アリスは当たり前の様に言う


「ま、魔族って?」


「戦って、死んだりしないのか?」


みんな口々に不安を口にする


「殺されたらもちろん死ねわ。覚悟してね」


アリスは冷たく言い放った


「何故俺達がそんな危険な事をしなければならないんですか?」


島村が尚も食い下がる


「あなた達が屑だからよ。宇宙はエントロピーにより平衡が保たれているの


 あなた達の愚行で負のエントロピーが増大した


 これを鎮めるにはあなた達の善行によって贖うしか無いの


 だから、死んでも、異世界を救ってね


 では、スキルリストを表示するわね」


島村は下を向いて、唇を噛み締めていた。一瞬、俺を見た


 彼は何かを悟った様な顔をした


 女性の施政官の上にリストが並ぶ。そこには


 勇者、賢者、剣聖等ラノベに出てきそうなスキルが24種類出てきた


「あなた達が話しあって、自分達で決めて」


「俺達で決める?」


島村が質問する。彼は尚もリーダーの責務を全うする


「そうよ。私はあなた達の性格や才能を知らない。あなた達自身が自分に最もあったスキルを決めるのよ


 ただし、勇者のみは慎重に決めてね。魔族の王、魔王を封印出来るのは勇者だけよ


 簡単に死んでしまう様な人に任せたら、あなた達全員無駄死になるわよ」


島村は既に自分達の状況を受け止めた


「俺達は相談した。正確にはクラスの中心人物だった島村と南達で決められた」


島村は高野への罪滅ぼしだと言ってくれた


 勇者は委員長の島村が、賢者は副委員長の南遙がなった


 俺はアルケミストというスキルを貰った


 俺が強く希望した。島村は安全な後方支援職を進めてくれたが、断った


 西野はレンジャーというスキルを貰った様だ


 その他のクラスメイトもスキルをめいめい貰う。


 スキルには戦闘系と明らかに後方支援スキルに別れていた


 その為、あえて戦闘に向かないスキルを選ぶ者も多かった


「最後に言っておくわ。あなた達は二度と元の世界に戻れない


 あなた達が元の世界に戻るには、次の世界を救うしかない


 次の世界を救って、天寿を全うしたら、元の世界に別人として転生できる」


「そんな、元の世界に戻れないなんて」


「世界を救えないと永遠に次の世界で転生を繰り返す


 次回の転生ではスキルはないわよ」


「そ、そんな」


「頑張って、世界を救う事ね。じゃ、転生してね」


そうアリス言うと俺達を光を包んだ。そして意識が飛んだ

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