12.高校生活、始動

カクヨムコンに参加するためカクヨム版のみ先行公開しています

本日は2話投稿します

7時・19時ごろ公開予定です


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 夜が明けて目が覚めると、今日から本格的な高校生活の始まりだ。

 今日からは普通に授業もあるし、遊んでばかりもいられない。

 ……あれ、今日の午前中はいろいろと説明だったか?

 とにかく、遅刻はしたくないし、早めに学校に向かおう。


★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆


 自分の教室につくと、すでに何名かの生徒は教室にいた。

 そんな生徒たちの中に、水鏡さんもいたわけだ。

 水鏡さんは俺の姿を見つけると、自分の席から立ち上がり、俺のところへやってきた。


「おはよう、琉斗君!」

「ああ、おはよう、水鏡さん」

「違うでしょ、琉斗君。お兄ちゃんと区別がつかなくなるから、名前で呼んでって言ったよね?」

「……わかったよ。おはよう、葉月さん」

「うん、よろしい」


 朝の挨拶から体力がガリガリ削られている気がする。

 そんな葉月さんの手には、なにかの用紙が握られていた。


「葉月さん、それ、なに?」

「これ? 部活動の入部届だよ。はい、これ琉斗君の分ね」

「……手際がいいね」

「でしょ? まだクラスには配布されていないから、職員室に行ってもらってきたの」


 本当に手際がいいことだ。

 これって断ることはできるんだろうか。


「……やっぱり、ゲーム同好会に入らなきゃダメか?」

「断る理由ってないよね? 皆いい人たちばかりだよ!」

「……とりあえず、もう少し考えさせてくれ。ほかの部活……は、興味ないか」

「うーん、早く入部届を出したほうがいいと思うんだけど、無理強いもよくないか。……あ、和也君もきた。それじゃあ、琉斗君、またね!」


 今度は教室に入ってきた和也がロックオンされていた。

 こうして眺めていると、目標に向かって飛んでいくミサイルか、さもなくばおもちゃに飛びつく子犬か……。

 どちらにしても、行動力が半端ないね、葉月さんは。

 葉月さんは、和也にも入部届を渡して教室を出て行った。

 はて、どこに行くのやら。


「おはよう、琉斗。お前も入部届、渡されたんだな」

「おはよう、和也。教室に来てすぐに渡されたよ」

「行動力がすごいな、葉月さん」

「まったくだ。……それで、和也は入るのか?」

「俺は入会しようと思う。……昨日も、あのあといろいろと教わったしな」

「そっか。……俺も入会しておくか」

「それがいい。そうしないと、また葉月さんから突撃されるぞ」


 ……本当にありそうで笑えない。

 これは早めに入部届を出しておいたほうがいいか。


「そういえば、葉月さんはどこに行ったんだ?」

「職員室だってさ。入部届を出しに行くんだと」

「……本当に行動力の塊だな」

「まったくだ。……さて、俺は自分の席に戻るわ。またあとでな」


 自分の席に向かう和也を見送り、今日の予定を確認する。

 一時間目はホームルームで、二時間目は部活紹介、三時間目以降が普通の授業予定。

 授業予定と言っても、最初の授業は説明がほとんどで終わるんだろうな。

 ……先生もきたし、今日も一日頑張ろう。


★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆


 午前中の授業が終わり、昼食の時間となった。

 うちの学校には学食もあるし、それぞれ思い思いに行動を始める。

 ちなみに、今日はお弁当を用意してもらっているので、俺は教室で食べる予定だ。


「うぃーっす。琉斗、一緒に食べようぜ」

「ああ、わかった。一緒に食べるとするか」


 同じようにお弁当を持ってきていた和也がやってくる。

 机の上にお弁当を出したところで、嵐がやってきた。

 ……葉月さんだけど。


「あ、ふたりともお弁当なんだ。それならちょうどいいかな」

「葉月さん、ちょうどいいって?」

「うん、お弁当、同好会で食べない? 昨日集まっていた皆は、同好会の部室で食べてるって」


 今度はお昼のお誘いか。

 ホントに行動力が有り余ってるな。


「……どうするよ、琉斗」

「……断っても面倒だし、行くとしよう」


 小声で打ち合わせをして、席を立つ。

 葉月さんに先導されて、昨日も訪れた部室へとやってきた。


「お、きたな葉月。……木場と笹木も一緒か?」

「はい、絢斗先輩。葉月さんに誘われたので……」

「……ああ、なるほど。まあ、座れよ。一緒にメシにしようぜ」

「では失礼します」

「失礼しまーす」


 部室を見渡してみると、いくつかのグループに分かれて食事をとっているのがわかる。

 どういう基準で分かれているのだろうか?


「……グループの基準が気になるかね、木場君」

「え? ええ、まあ」

「だいたい、メインの活動内容で分かれているよ。私たちは《Braves Beat》、あっちは別のVRゲーム。あちらはTCGだな」

「好きなゲームごとに分かれちゃってるんだよねー。放課後は早く帰っちゃうから、お昼に集まって情報交換とかしてるんだよね」


 ゲームごとに分かれているのか。

 ある意味わかりやすいな。


「まあ、そういう感じだ。……ところで、ここに来てくれたということは、ゲーム同好会に入会してくれると考えていいのかな?」

「そうですね、その予定です」

「俺もそのつもりです。これからよろしくお願いします、先輩方」

「ああ、これからよろしく頼むよ」

「よろしくねー」

「よろしくな、木場、笹木」


 一通り挨拶も終わり、食事となる。

 そして、お弁当を広げるわけだが……。


「琉斗君、お弁当少なくない?」

「俺はこれぐらいでいいんですよ、葉月さん」


 俺の弁当箱はほかの皆に比べて一回り以上小さかった。

 俺は食が細いから、これくらいでちょうどいいのだ。


「……もっと食べないと、背が伸びないよ?」

「うっさいわ。もともと食が細いからこれくらいでいいんだよ」

「えー。もう少し食べようよ。ザンギと卵焼きあげるから」


 いうやいなや、俺の弁当箱にザンギと卵焼きが追加された。


「……どうも、葉月さん」

「うんうん。ご飯はしっかり食べないとね」


 得意げにしている葉月さんは置いておいて、お弁当を食べ進める。

 量は一番少ないが、食べ終わったのはほかの皆と同じくらいになった。


「ふむ、弁当も食べ終わったし、今後の予定を話しても構わないだろうか?」

「構わないぜ。と言っても、レイとブレンのレベル上げがメインだろ?」

「そうなるな。……ちなみに、木場君の戦闘レベルはどれくらいなんだね?」

「レベル10ってところですね。生産は50ですけど」

「木場君も戦闘レベルを上げにこないかね?」

「装備の納品が遅くなりますよ?」

「……うむ、それも困るな……」


 俺の戦闘レベルだが、いちおう10はある。

 戦闘レベルが10にならないと、隠れて行動するのに便利な【隠行】を覚えられないため頑張ってあげた。

 なお、【隠行】のレベルは30まで上がっている。


「それでは、放課後に詳細な予定を詰めるとするか。木場君と笹木君も来るかね?」

「俺はパスです。早めに帰って注文された品を作りたいので」

「了解だ。笹木君はどうするね?」

「俺は寄らせてもらいます。レベル上げも先輩方にお世話になりますし」

「承知した。……さて、そろそろ昼休みも終わりだ。教室に戻るとするか」


 見ればほかのグループも帰り支度を始めている。

 俺たちも後片付けを行い、教室へと戻る。

 その途中、和也が話しかけてきた。


「琉斗、いちおう放課後も顔を出したほうがいいんじゃないか?」

「……別に大丈夫だろ? 三海先輩も構わないと言ってたし」

「そうなんだがなぁ。本当に人付き合いが得意じゃないよな」

「……そこは自覚してるからほっとけ」


 結局、その日の放課後は同好会の部室には顔を出さずにまっすぐ帰った。

 ユニーク装備の生産は本当に時間がかかるから、なるべく時間を効率的に使いたいんだよ。

 さあ、ゲームにログインして作製を始めよう。

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