第10話 合唱コンクール


 あれから月日が流れた。

1月の半ば過ぎで、寒いと感じる朝。

引っ越しまで、あと1ヶ月になるところだ。

2学期のあの頃が懐かしい。

クラスメイトに引っ越しすると

知られてから、寂しい気持ちで日々を送っていた。


そんなある日、学校行事の1つ、

クラス対抗、合唱コンクールが開催される事になっていた。


私にとって、皆と最後の行事になりそうだった。

皆との思い出になりそうだ。

そして大役がきたのだ。


昔から私は、ピアノが好きで習っていた。

小1から習っていたピアノ…。

今となっては、バスケと両立してきてよかったと思う。

合唱コンクールの伴奏を弾くことになっていった。


 ある日の夕方、私が音楽室でピアノの練習をしてると教室の戸が~ガラッ~と開いた。

オレンジ色の斜めの光を背に浴びながら、

男子が

「ブラボー!!」

とにっこり白い歯を見せて入ってきた。

手を2回ほどパンパンとたたく。

あー、びっくりした。

それはなべ君だった。

「トモさん、ピアノ上手だなぁ。今度の合唱コンクール、伴奏するんだろう。頑張れよ。」

と励ましてくれた。

「まかせとき!!」

と私は胸をドンとたたいた。


皆の前で演奏するピアニスト…。

子供の頃からの1つの夢だった。

夢見るピアニスト…。

「私、頑張るから…。」

とその夢に胸を膨らませた。


~神様、お願い、願いを2つ聞いてください。~


あと残り1ヶ月となる神戸での中学生活。


皆の前で上手にピアニストになりきる事。


そして…。


なべ君とずっーと仲良くいられること…。


私は彼の前では可愛らしい少女になっていた。


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