第7話 委員長、時々女神。そのに!
「……クラス会?」
「うん。ほら、新しいクラスになって初めましての人、結構いるでしょ? 今日は午前中で終わりだし、みんなでご飯食べてカラオケにでも行かないかって話になってるみたい」
始業式の会場である体育館から教室に舞い戻り、今は担任教員待ちの時間。俺が自分の席で一息ついたタイミングを見計らって話しかけてきたのは、
『だから新キャラは出ないって! 疑り深いんだから~』
疑心暗鬼に陥ってんのは誰のせいだと思ってやがる、クソ女神。
『酷い⁉ 私がどれだけ苦労して神を説得したかも知らずに……』
全部知ってるよ! 筒抜けだっただろうが!
『そんな……私にプライバシーはないというの?』
それこそ俺の台詞だからな⁉
「日下部君?」
「え? ああ……悪い。ぼーっとしてた」
「ふふっ、上の空なんて珍しいね」
優しく微笑む鷲見。もう全身からマイナスイオン放出しているんじゃないかってくらい、癒しオーラが半端じゃない。唯と玲奈はドタバタ系だから、その対比が顕著なんだよなぁ。疲労が吹っ飛ぶようだ。
『またまた、疲れたとか言っちゃって~。実際は嬉しかったくせに~』
俺は唯と玲奈に疲れたとは言ってねえだろうが、心労の根源が。
『失礼な! 私は自称癒しの女神なんだからねっ!』
ねっ、じゃねーよ!
そもそも、お前から癒しを感じたことはねえ! 卑しい女神に改名しやがれ!
『卑しくないもんっ! いやらしいだけだもんっ!』
言葉選びに必死になり過ぎて、自身を擁護できていないことに気づいていないのか……、なんていやらしい女神だ。
「それで、どうする? 参加する?」
頬杖を付きつつ、首をかしげながら上目遣いで聞いてくる鷲見。
そのコンボ止めて! 可愛いが過ぎるから!
「う~ん、どうしようかな」
「何か予定あるの?」
「まあ、あると言えなくもない……」
午後は唯の買い物に付き合うつもりだった。
ただ『行く』と伝えたわけではないので、断りの連絡を入れることも可能ではある。その場合は夕食時に拗ねた唯を宥めるイベントに繋がりそうだけれど。……むしろアリだな?
「そうなんだ……だったら私も行くの止めようかな」
「なんで? せっかくの機会なんだし参加しろよ。委員長がいないクラス会なんて、ルーの入っていないカレーみたいなもんだぞ?」
ぶっちゃけ、鷲見とお近づきになりたくて参加する男子も結構いるだろうし。
「それは大げさな例えだし、副委員長が言っていいのかって突っ込みはさておき、当人に理由を聞いちゃうあたり日下部君ってほんと……だよね」
「なんだって?」
「さて、なんでしょう~」
人差し指を唇に当てて、いたずらっぽく笑う。いちいちツボを突き刺してくるなぁこの娘は。
「……なんてね、冗談だよ」
「え?」
「日下部君の存在で私の行動は変わったりしません。……もしかして、本気にした?」
くすくすと笑う姿を目の当たりにすると、からかわれたことなんて意識から吹っ飛んでしまう。むしろ永遠に掌の上で転がして欲しい!
『……気味が悪い』
おい、かつてないレベルでドン引いた声出してんじゃねぇぞ変態女神。
『冗談だって。……もしかして、本気にした?』
……お前は永遠に黙ってろ。
『なんでぇ⁉ ねえなんでぇ⁉』
「……今はまだ、ね」
「何か言ったか?」
「なんでもないよ~」
女神の叫び声でとてつもなく重要な萌えポイントを聞き逃した気がする。
「ま、予定があるなら仕方ないかな。まだ出発までは時間あるから、もし参加するなら教えてね」
「わかった。行けなかった時には土産話頼むぞ。楽しみにしてるからな?」
「任せておいて。ルーのないカレーがどんな味だったか、ちゃんと教えてあげるから」
流石は委員長。魅力的で頼りになるぜ!
最後の一文だけはいまいち理解できなかったけれど。
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