第28話 二人をくっつけよう計画

「それで、二人の事だけど。どうしようかしら?」

「うーむ。どうしたもんかなあ」


 結衣の勘違いも解けたところで、俺たちは本題について話し合っていた。

 倫太郎と加藤をどうくっつけるか、という話だ。


「加藤も、倫太郎のことは気になってるみたいなんだよな」

「聞いたの?」

「……いや。ただ、倫太郎のことは気にしているっぽい」

「なら、安心なのかしら」


 さすがに、勝手にばらすのは気が引けたので、そういってごまかす。


「あとは、デートにこぎつければ、うまく行くと思うんだが」

「倫太郎君に、デートに誘うように持ち掛けてみる?」

「やっぱ、それが妥当か」


 倫太郎は躊躇しているようだけど、加藤の方も脈ありと思えば話は違ってくるだろう。

 双方の話を聞いている俺にしてみれば、もう出来レースのような気さえしてくるが。


 ともあれ、双方、動けないままということもあるので、後押しはしてやりたい。


「とりあえず、俺は倫太郎に話してみるわ」

「そっか。うまく行くといいわね。私にも何かできることがあるといいんだけど……」

「加藤から相談が行くかもしれないので、乗ってやってくれ」

「わかったわ」


 その後は、明日の計画を詰めるために二人で夜遅くまで話し合った。

 結衣はアドリブが苦手だからなあ。


---


 翌日。登校した俺たちは、倫太郎が来るのを待って、場所を移す。


「それで、どうしたんだい?」

「加藤のことなんだけどな」

「由紀子ちゃん?」

「こないだ、ちょっと聞いてみたんだ。お前の事、気になっているみたいだったぜ」

「そっか。ありがとう。ちょっと不甲斐ないけど」


 他人の恋愛相談には乗っても、自分が躊躇しているのが恥ずかしいのだろう。


「誰でも、自分のことならそんなものだろ」

「……わかった。ここまでお膳立てされたんだ。由紀子ちゃんをデートに誘ってみるよ」

「おう。頑張れ。応援してるぜ」


 これで、よっぽどのことが無ければデートは取り付けられるだろう。

 なんたって、お互い気になってるわけだし。


 昼休みになった途端、俺たち二人は、素早く教室から離脱する。

 一緒にいると、四人で、って流れになりそうだしな。

 

「あれ、どうしたのかにゃ。二人とも」

「ああ。今日は、ちょっと二人きりで食べたいんで。すまんな」

「そういうことなら。お幸せに~」

「……」


 事情が分かっている倫太郎はなんともいえない表情で俺たちを見つめてきた。

 

 昼休みが終わる頃に戻って来た俺たちは、倫太郎に結果を聞いてみる。


「オッケーだって。ほんとにありがとう」


 深々と頭を下げる倫太郎。


「それはデートがうまく行ってからにしてくれ。っつっても、大丈夫だろうけどな」

「頑張ってみるよ」

「頑張れ。相談には乗るから。LI〇Eでもなんでも、言ってくれ」

「どうしても、というときだけ頼らせてもらうね」

「ああ」


---


 その日の夜。

 結衣と二人で、いつものように、部屋でごろごろしていたところ、加藤からメッセージがあった。


【ちょっと、相談があるんだけど。いいかな?】

【おう。何でも】


 きっと、倫太郎からデートに誘われた件だろう。


【倫太郎君から、デートに誘われて。それで……】

【オッケーしたのか?】


 結果は既に聞いているので、しらじらしいが。


【うん。それで、嬉しいんだけど、どういう服着て行こうとか、どうしたら喜んでくれるかな、とか、色々気になっちゃって】

【そりゃそうだよな。わかるわかる】

【それで、ちょっと相談に乗って欲しいんだ】

【何を知りたい?】

【倫太郎君が喜んでくれそうな服とか、喜んでくれそうなこととか】

【おっけー。どんどん聞いてくれ】


「なんか、加藤からデート当日の相談があった」

「そう。私じゃなくて、昴の方に行くのが少し複雑だわ……」 


 こいつにデートのアドバイス求めるとか、なあ。


「あら?倫太郎君からだわ」

「お」

「加藤さんとのデートについて、相談に乗って欲しい、だって」

「今度はそっちか。しかし、俺じゃなくて結衣の方か」

「こういうのは、相手と同性の人に聞きたくなるのかしら」


 首をかしげる結衣。

 しかし、いくら女性とはいえ結衣だぞ。

 倫太郎も、こいつの天然さは知っているだろうに、よりによって。


「ともあれ、これで、あとは当日上手く行けば万々歳だな」

「そうね。頑張らなくちゃ」


 そう、気合を入れる結衣。


「いや、頑張らんで、普通でいいからな」


 それと、アドバイスの文面は俺もチェックさせてもらうことにしよう。

 そう堅く誓ったのだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る