第26話
私が目覚めた時は、既にお日様が天高く昇った頃だった。
隣には既にアリオスはおらず、私一人。
肌を滑るシーツなんかはさらさらで心地良く、自分の身体も綺麗に清められていた。
恐らくアリオスが処理してくれたのだと思うが・・・・
全身が重く、指先すら動かすのが
くっそう・・・・少しは手加減してよねっ!!
言わずもがな、私はアリオスに抱き潰された・・と言っていいと思う。
確かに、雰囲気にのまれて盛り上がったよ?アリオスにしてみれば、自分で言うのも恥ずかしいけど、好きだった人がやっと手に入って、私にしてみれば嫌われるかも・・・と思ってた人と想いが通じ合えて・・・・・・
お互い大人だし、例え脳内がピンクのお花畑になっていたとしても・・・・そもそも、限度ってあるでしょ!?あるよね??
なのに・・・・あんの絶倫エロエロ王子ときたら・・・・
何度無理だとお願いしたか。その度に「ごめん、無理」と、私の言う「無理」とは別の意味を込めて却下してきた。
やっと解放された・・・と思った時には、窓の外は白んでいた様な気がする・・・・いや、白んでた。
愛してくれるのは嬉しいけど、やっぱり限度ってものがあると思うの!
心の中で考え付くだけの罵詈雑言を並べていると、ノックもなしに誰かが勢いよく入ってきた。
この部屋にそんな風に入ってこれるのはただ一人だけで、満面の笑みを浮かべたソレを、私はギッと睨み付けた。
「サクラ!目が覚めた?身体は大丈夫?お腹空かない?」
私の睨みなどなんのその。顔中に口付けしそっと私の身体を起こした。
正直、自力でまだ身体を動かすのがきつくてされるがままにしていると、肩からはらりと肌掛けが滑り落ち・・・・私はぎょっと目を剥く。
私は素っ裸だった・・・・しかも、身体中には、病ではないかと思われるほどの赤い斑点・・・・
「ひぃぃぃ~~~~!!!」
奇妙な悲鳴を上げ、布団にくるまろうとすると、アリオスがその手をがっしりと掴み、再び布団へと押し倒した。
「ア・・・アリオス?」
恐々と彼を見れば、恍惚とした表情で私を上から下まで舐める様に見つめ、ほう・・・と溜息を漏らした。
・・・・・いや、ちょっと、怖いんですけど・・・彼って、こんな人だったっけ???
思わず逃げる様に身体をよじれば、ベッドの上にあがり私を跨ぐ様に覆い被さってきてきた。
「夢でなくて、良かったよ。目覚めた時、サクラが居なかったらと思うと怖くて、眠れなかった」
そう言うと、ギュッと抱きしめてくる。
「あぁ・・・サクラの鼓動・・・・良かった・・・・」
そう言ったかと思うと、急に身体に重みがかかり、胸元からはすぅすぅという、寝息が聞こえ始めてきた。
「え?アリオス?・・・・・眠っちゃったの??」
彼の身体を揺り動かしてもピクリとも動かない。
本当に眠っていなかったのか・・・と驚きつつも嬉しくて、私はギュッと彼を抱きしめた。
恋とは不思議なもので、絶対にこの人とは結婚なんてしないっ!と思っていたのに、それがある日あっさりと覆ってしまった。
彼を遠ざけるための努力なんて、風に飛んで散ってしまうほど、いとも簡単に。
幸せを噛みしめながら、つらつらとそんな事を考えていたんだけれど・・・・
愛だ何だと言いつつも、時間が経てば経つほど・・・・あぁ・・・・重い・・・・
現実なんてそんなものである。
そう思いながらも、その重みが愛おしくて、彼の頭を優しく撫でた。
何だか、先が思いやられそうな気がするけど・・・まぁ、いっか。
愛しさを噛みしめる様にしばらく頭を撫でていたけど、現実的にこの重みには耐えられなくて、息苦しくなってきて彼の下から抜け出し、そっとその頬に口付けた。
ベッドの上に置かれていた寝間着とガウンを身に着け、確かめる様に一度彼の様子を伺い、そっと寝室を後にする。
これは彼が目覚める前に戻ってこなければ、大事になりそうだ・・・と思いながら、アリオスの部屋なのに何故か控えていたリズからの意味ありげな視線を無視し、着替えを済ませ、盛大に鳴り始めた腹の虫を黙らせるために食事を済ませた。
それらは全てアリオスの部屋で済まされた事に疑問を感じつつも、彼が眠るベッドの横に一人掛けのソファーを置いてもらい、ゆったりと身を沈める。
あぁ・・・身体がだるい・・・あちこち痛い・・・・
アリオスの寝顔を見つめながら、目を閉じる。
私がいないと大騒ぎになるから目覚めるまで此処に居るなんて・・・・私も、どんだけ甘いんだか・・・
頭の中では何故か元居た世界での思い出が走馬灯の様に映し出され、「あぁ・・・私は身も心もこの世界の人間になったんだ」と漠然としながらも納得した私はゆっくりと意識を手放していった。
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