第54話 文化祭にはコスプレですよね!
次の日のホームルーム、早速文化祭の内容決めが始まった。
「ではまず結論から言うわ。予想通り、許可がおりました」
『イエエエエエエイ!』
「こら、静かにしなさい! 他のクラスに迷惑でしょっ! 予定通り、体育館を貸し切ります。時間は3日間各日程の昼12時から夕方5時まで。そのほかの日程については、運営の手伝いや、他に申請したクラスがいたので体育館で行われるその行事のお手伝いなど。勿論向こうもこちらに協力してくれることとなっているわ」
なるほど、合計で15時間の長丁場になるな。
まあ、同じ曲を演奏してもいいし、日によってスタイルを変えるなどの工夫もしていけばそれくらいの時間にはなるだろう。
「そして、何よりも、まずは誰が何をやるのかを決めないといけないわね。でもその前に一つお知らせがあります」
ん? なんだろう?
「私、演奏するので」
……え?
『エエエエエエエエエエ』
「だからあなたたちねぇ……もう高校生でしょ、そうやっていちいち驚かないの! 私の先輩、後輩の四人でバンドを一つ作ることにしました。なのでその分のタイムスケジュールは埋めてもらいます。頑張って交渉したんだからそれくらい許して欲しいわ、いいわね?」
「「「はーい」」」
「では本題の、誰が何をやるかだわね。今日はあまり時間がないから、今度設けられる臨時の文化祭用の授業時間で一気に決定してしまいましょう。勿論それまで、学級委員を中心に相談してくれても構わないわ。何事もスムーズに行くようにしましょう。ではその他の連絡事項を……」
まさか凛子が、バンドを結成するだなんて。偏見かもしれないが、こんなキャリアウーマン風の人でもそういうのするんだな。人ってほんと見かけによらないぜ。
「なあなあ、伊導。俺たちでやらないか?」
「うん? バンドをか?」
「そうそう、俺ギターやるから、お前他の何かやれよ」
「うーん、そう言われても……」
特別何か演奏できる楽器があるわけじゃないし。歌もそれほど。他の人と組んだ方がいいと思うが。
「何を気にしていんのか大体分かったが、別に大丈夫だせ?
練習すればなんとかなるって!」
「でもなあ」
「そこ! 私語しないの。あと阿玉くん、余裕そうだけど、テストはどうだったのかしら? まさか赤点じゃないわよね?」
といじわるそうな笑顔を浮かべる。
クラスの何人かも笑っているようだ。
「先生そりゃないって。今回ばかりは今のところ大丈夫だぜ? 文化祭で補習なんて勘弁だからな!」
「へえ、やるじゃない。まあいいわ、とにかく連絡は以上で終わりです。はい号令」
そうして先生は出ていった。
「じゃあそゆことだから。ちょっと考えておいてくれ。まだ多少時間はあるけれど、あまり遅いと練習も間に合わなくなるからな、頼んだぞ」
「あ、ああ」
うーん、バンドねえ……本当に何かできるわけじゃないんだけどなあ。
まあでも泰斗もかなり乗り気みたいだし、考えてみるくらいはいいか。
そうして昼休み、いつもの四人で集まる。
「へえ、バンドかあ」
「そうそう。そっちは何するんだ?」
「メイド喫茶。ただしスカートじゃなくてキュロットだけどね。流石に色んな人が来るからスカートなんて駄目って言われちゃったから苦肉の策だよ」
「ほう、ものは考えようだな」
確かに、女子高生のメイド服姿となれば、普通にお店を楽しむ以外の迷惑な目的を持った輩が来てもおかしくないからな。最近は盗撮された画像がネットにすぐに上げられたりするし、一度そうなるともう取り返しのつかないことになる。自衛は大事だ。
「二人も着るのか?」
「んん? 何、伊導くん私のメイド姿見たいわけ〜? むふふっ、言ってくれたらアパートでも見せてあげるのにな〜」
「なっ、ただの雑談だろ、本気にするなよな」
見たいのか見たくないのかと言われれば……見たいけど? それが何か?
「ちなみに俺は霞に既に見せてもらったぁいたあっ!! 何すんだよ!?」
「流石に教室でそんなこと言っちゃダメっ。ったく変態なんだからっ」
見せてもらったって……そういうプレイしたってこと? 早く爆発しろよほんと。
「あはは、霞のメイド姿、私も見たいな〜。今度二人で観に行かない?」
「え?」
「サブカル街ってあるでしょ? あそこに品揃えの豊富なコスプレ屋さんがあるらしいんだ〜」
――――サブカル街か
この街の南側には電気街と呼ばれる歩行者天国に平行するように、サブカル街と呼ばれる歩行者天国が通っているのだ。
そのエリア一帯は様々なジャンルのお店が集められた道路が縦横に数本走っており、そのすべてが歩行者天国となっている。筋ごとにお店の種類は分けられており、どこの道に目的のお店があるのか非常にわかりやすい構造となっている。
元々は商店街があった場所なのだが、行政による再開発でこうなったのだ。
地元も乗り気で協力したから、元々いた人たちを追い出したとかでもないし、官民の連携が上手く行ったパターンとして全国的に名前が知られた経緯がある。
「あ、よかったらみんなで行こうよ! 土日ももうすぐだし、どっちか空いてるかな?」
土日かあ、今のところは何もないな。それにコスプレ店じゃなくても何か気になるお店があるかもしれないし。
「うん、俺は大丈夫だ。行こうじゃないか」
「俺も勿論! 霞の色々な姿を見られるなんて、こんな機会逃すわけにはいかないからな!」
「……言ってくれればいつでも見せてあげるけどっ……」
「そ、それって? うひょー、霞愛してる!」
「はあ、泰斗くんったら〜。霞ももうちょっと羞恥心とかないわけなの〜?」
「し、仕方ない、泰斗が喜ぶなら辱めも甘んじて受け入れるつもりっ……!」
恋は盲目とはよくいうけど、この二人の場合は生きる目的そのものが恋みたいな感じになってしまっているな。まあせっかく付き合ったんだし、このまま長く続けばいいのだが。
「やれやれだね。伊導くんはコスプレとかするの?」
「俺か? 俺は特にした記憶はないな。せいぜい、子供の時にハロウィンでちょっとお面被ったりしたくらいかな?」
「ほうほうなるほど〜、じゃあ今度の休みは楽しみですな〜」
などと流湖は手をわきわきさせおっさん臭いセリフを口にする。
「な、なんだよ、まさか俺にさせる気か?」
「当たり前じゃん、しなきゃ損損だよ〜」
「俺やっぱ行くのやめようかな……」
なんだか寒気がしてきたぜ。
「そんなご無体な。いいじゃんいいじゃん〜ねえ〜」
と、俺の腕を取りわざとかはわからないが自らの胸に当ててくる。そんな小手先の誘惑でこの俺が靡くとでも?
「もし良いって言ってくれたら、なんでも一つ、いう通りのコスプレしてあげるよ? どうっ?」
とそのまま椅子から立ち上がり耳打ちしてくる。
「…………本当だな?」
「うん、約束するっ」
「……………………はあ、わかった、行くよ」
「やった〜ありがと〜」
と言い、俺の首に抱きついてきた。おい、クラスの男子が死の視線を送ってきてるから離してくれ!
「じゃあ決まりだな。日付はどうする?」
「土曜日がいいかもっ」
「俺も、行くなら早いほうがいいかな」
「じゃあ土曜日の13日ってことで! 集合はどうしようかな?」
「私たちの方が近いから、こっちに来て欲しいかもっ? この前はそっちに合わせたから」
そうだな、まず泰斗と霞の家は南の方にあるし。俺たちがあっちに行った方が効率が良さそうだ。
「だね〜。じゃあそのまま直接コスプレ店で集合はどう?」
「さんせー」
「りょうかいっ」
「うん、それでいいと思うぞ」
「じゃあ決まりね! みんなよろしく〜」
コスプレか、さて、どんな服を着させてやろうかな、ぐへへ……おっと、イケナイ方の俺が出てきてしまったぜ。
しかしこの時の俺は、あることに気がつけなかった。"四人"で済むはずがないのだということを失念していたのだ--
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