6話 ここは安全地帯です⸜( ‘ ᵕ ‘ )⸝⸜

「とりあえず手錠外して欲しいです」


由良穂香(ゆらほのか)は言った。


僕はポケットの中を探してみたが、持ってなった。

そして、車の中を一通り探してみたけど、鍵は見つからなかった。


「ごめん」

「パシリさんだし、しょうがないですね。携帯的なものは?」

「ごめん」

「だよね」

「家に帰ります?送るけど・・車の鍵は有るみたいだし」

「デートの帰りじゃないんだから、もう」

「ごめん」

「でも、例えば帰ったとしてもですね・・・・」


由良穂香はじっと考えた。そして、


「とりあえずこの場所から離れたいです。

いつ主犯の皆さんが帰ってくるかも解らないですし・・・」


「うん、解った」

「ねえ、パシリさん」

「何?」

「私を本当に裏切らない?」


由良穂香は、僕をじっと見つめた。

僕が頷くと、


「私の為に死ねます?」

「急にそんなこと言われても・・・」

「裏切らないって、そう言う意味ですよ。

今の現状は、遊びではないのです」


僕が躊躇していると、彼女は舌を出し、覚悟を決めた目をした。

私はあなたの為なら死ねるよ・・・と。


「!」危険を察した僕は、


「死ねる」

と咄嗟に言ってしまった。


彼女は舌をしまうと、儚げに微笑んだ。


その後、僕らは周囲を警戒しながら、公園の駐車場を抜け出し、国道で尾行が無いことを確認した後、

酷道こくどうへと入って行った。


整備の行き届いていない荒れた国道の事を、物好きな冒険家たちは酷道こくどうと呼ぶ。

物好きな冒険者たちは、荒れていれば荒れているほど、歓喜する。それが酷道こくどう

真夜中の酷道は完全な暗闇で、僕の心は不安で満たした。


もし主犯の皆さんに襲われたら、きっとその暗闇に葬りさられてしまうだろうし・・・

酷道でワゴンを降りて、そこから山道を歩くことになった。


「えっ、タルタルソースの箱持って行くんですか?」


僕はなぜか、『白夜のタルタルソース』を、持って行かなければならない衝動に襲われていた。


「うん、なんとなく・・・」

由良穂香は、不思議そうな顔をして

「迷うと大変ですから・・・」

と段ボールを抱える僕の腕を掴んだ。


懐中電灯も無い状態での山道を、足元を確認しながら歩いた。


時折、彼女は背後を確認した。

闇の中には風の音だけがあった。


20分くらい歩いた先の空き地に、錆びついた古いスクールバスが止まっていた。

「とりあえず、ここは安全地帯です」

由良穂香は、錆びついたバスのドアを開けた。



つづく

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