第178話 いざ決めろ、最強の9連携!

 ファイナルとコールが走った。

 コールは腰から、いかつい武器を抜く。

 チェンソーってやつだ。


『ヒャッハアアアアアッ! バラバラにしてやるぜえっ!』


『されるかよっ! がははははは! それが貴様の最大の武器だと知っているぞコール!』


 回転するチェンソーの刃を、白刃取りで止めるメイオー。

 そのまま跳び上がって、見事なローリングソバットをコールに決めた。


『ぎえー』


 吹き飛ぶコール。

 だが、着地するよりも早くファイナルが攻撃を仕掛けている。


「はやぶさ斬り!!」


『ぬっ!?』


 メイオーの反応が間に合わなかった!

 あの剣、めちゃくちゃ速いぞ。恐らく、俺が知る全ての技と呪法の中で一番速い。


『カウンター……』


「はやぶさ斬り!」


 カウンターが間に合わない速さ……!

 ファイナル皇帝、こんな隠し玉をもってたのか。


 攻撃を仕掛けようとしているイクサも、驚きに目を丸くしている。


 イクサの最高の剣技は音よりも速く、衝撃波が生まれる。 

 だが、ファイナル皇帝の最速の剣技は衝撃波すら生まれない。

 言うなれば、光速の剣だ。


『だがっ』


 だが!


『この程度じゃあ、オレは倒せないね!』


 大きく振り回される、メイオーの裏拳。

 そう、速いが、軽い……!

 並のモンスターなら一刀両断だろうが、相手は世界最強の闘神、メイオーである。


「だったら、うちが決めてやるよ!」


「覚悟せよ、メイオー! これが正義の裁きだ!」


 ミッタクとエスプレイダーが襲いかかる!

 ミッタクの撃魔斬が輝き、エスプレイダーのレイダーキックが炸裂する。


 メイオー、これらの攻撃を真っ向から受け止めて……。


『良い攻撃だ! これは褒美だぞ! メイオー・ダブルラリアット!!』


 腕を振り回した。

 エスプレイダーが跳ね飛ばされる。

 だが、風の呪法を操るこの男は空中で姿勢を直した。


「恐るべきパワー!!」


「うちも負けないよ! トルネードスピン!!」


 ミッタクが回転する。

 真っ向から、メイオーとぶつかり合い始めた。

 流石にメイオー相手では押しきれないが、それでも一瞬拮抗する。

 すげえぞミッタク。


 ここでようやく俺とイクサも到着した。

 というか、イクサは攻撃を仕掛けようとしていたのだが、仲間達がごちゃごちゃとメイオーに殴りかかっていたのでなかなか動けなかったのだ。

 俺ごと敵を攻撃していた時から成長したなあ。


「イクサ、最強の技の連携で行くぞ!」


「おう!! だがアレはまだ解放されていない……!」


「オーケー。とっておきって訳だな。じゃあ……不動剣!」


 俺は立ち止まりざまに、カールの剣を抜いた。

 刃が閃く。

 恐らくこの技の速度は、はやぶさの剣と同じ。


「地擦り残月!!」


 不動剣の剣閃お追うようにして、イクサが駆けた。

 大地を切り裂く刃が、メイオーに叩きつけられる。


『不動残月』


『むおおおおっ!? なんのおっ!!』


 ピコーン!!

『メイオー・ソニックハリケーン』


 メイオーの全身の筋肉が膨れ上がり、その力を以て思いっきり腕を振り下ろす。

 すると、そこに真空の大竜巻が生まれた。


「な、なんだそりゃあ!? ぎゃーっ!」


 ミッタクが巻き込まれて、派手に血飛沫を上げる。


「うおおっ! ダウンドラフト!!」


 エスプレイダーが風をまとって突っ込み、ミッタクを救出。

 イクサはあちこち切り裂かれながらも、ギリギリのところで退避した。


 あの邪神め、なんてとんでもない技を閃きやがる。

 だが、あいつの投げ技に掴まれたらそれこそ一巻の終わりだ。


 遠距離技を使ってる間に、仕留めるぞ!


『やべーやべー。チェンソー対策を身に着けてるとはなあ……。おしっ、あいつの技を止めるのは任せとけ』


 コールがトコトコと前に出た。


「あっ死ぬぞ」


『へーきへーき。うらあっ、イージスの盾!!』


 コールがどこからか、光り輝く盾を取り出す。

 これでたった一人、メイオーの攻撃に立ちふさがったのだ。


 メイオーの真空嵐は、真っ向から盾に激突。


『おおおおおおっ!? オレの技を受けきるか、コールッ!!』


『そういう盾なんでね!! あとはてめえとタイマン張る度胸がありゃ使いこなせるんだよ!』


 なんと、この英雄神、メイオーの攻撃を受けきったのだ。

 伊達に先代の英雄やってないな!!


 俺はこの隙に、六欲天からもらった祭具を展開した。


「出てこい、ダグ・ダムド! ワース・ワッシャー!」


「よし、うちも……! 一回しか使えないって師匠は言ってたから、これが最初で最後の……!」


 ミッタク、お前も持ってたのか!


 彼女が胸元から取り出したのは、白い毛玉みたいなものだ。

 これを地面に叩きつける!


 すると、戦場に三体の巨大な影が出現した。


 ダンゴムシの姿をした六欲天、ダグ・ダムド。

 大鷲の姿をした六欲天、ワース・ワッシャー。

 シロクマの姿をした六欲天、ポー・ベアグル。


 三柱の六欲天がこの場に現れたのだ。


『久しいなメイオー! この人間に祭具を預けて正解だったわい!』


『素晴らしいタイミングで呼び出してくれました。我が力で、あなたに引導を渡しましょう』


『おやまあミッタク、ちゃんと頑張ってたみたいだねえ。あたしゃ鼻が高いよぉ』


 おい、一人だけおっかさんがいるぞ!!


「師匠! それは後で……!」


『そうだったねえ! よし、あんた達、行くよ!』


『指図するでない!』


『ハハハ、まあたまには良いではありませんか』


 笑うワース・ワッシャー。

 相変わらず人間ができている六欲天だ。


 そして三柱が、石のブレス、竜巻攻撃、落下する大氷柱と言った攻撃を繰り出してくる。

 

「みんな!! 私達もオクノの手助けをしよう!! 届かなくても、少しでも助けになるよう!」


 ラムハの叫びが聞こえた。

 オクタマ戦団がそれに応えて吠える。


 飛んでくる、光の弾、水の弾丸、鋭い矢の技、集中射撃に水を纏った槍の一撃。

 躍りかかるように、シュウスケとマナミが連続攻撃を仕掛け、そして消えて後衛に戻る。

 反撃するメイオーは、コールのイージスの盾と前に飛び出してきたジェーダイが防ぎ切る。


 空の上に変身した明良川が現れ、強烈な炎のブレスを吐いた。

 彼女の背から飛び降りた日向が、メイオーに強烈な飛び蹴りをたたき込む。

 そして二人とも消え、後衛へ。


 最後にシーマが現れた。


「メイオー様! わしを産み出してくれた恩は忘れてはおりませぬが……! わしは、まだまだこの世界にいたい……!!」


『おおお……! 親の元を旅立つのか……! オレは……祝福するぜシーマ……!! だが、俺を倒さねば俺がお前を殺す……!!』


「分かっているのじゃ! 喰らえメイオーッ!! イビルボールッ!!」


 シーマ渾身の邪の呪法が炸裂する。


 この、現れては消える動き……!


「いやあ、ハード極まりないね。これだけの速度で能力を使ったのは初めてだ」


 タカフミがめちゃくちゃしんどそうだ。

 だが、いい采配だぞ。


 メイオーが動けないでいる。

 それに、攻撃を仕掛けてくるメンツがどれも、メイオーよりも弱い。

 つまり……あいつは閃け無い。


 俺達の攻撃は、逆に奴を閃かせて強化する可能性が高い。

 だから、やるならばここで決めるべきだ。


「わおーん!」


 フタマタが走ってきた。


「なんだなんだ」


「わんわん!!」


「自分は使い魔だから、いったん呪力に戻ってご主人さまを強化するだと!? 俺と合体する気か! だがもとに戻れるか分からないんだぞ!」


「わんわん!!」


 フタマタ、このまま別々でいるよりも、合体したほうが道が拓けると訴えかけてくる。

 お前の心意気……無駄にはしないぞ!


「幻獣術、解除! フタマタ、俺の中に戻れ!!」


「わおん!」


 高らかに吠えると、オルトロスは光り輝いた。

 そして、俺に向かって突っ込み……。

 俺達は一つになる!


『フオオー!! イイトコロデワタシモ復活デスヨーッ!! 残ッタ兄弟達ヨ! 最後ノ合体デス!!』


『オオー!』


 ダミアン軍団が走ってきた!

 彼らはその場でガチャンガチャンと合体し、一つの武器の形になる。

 これは……!


『こーるサン! コレヲ使エ!』


『おおおっ! こ、こいつは……特大サイズのチェンソーか!! 名付けてダミアンチェンソー!!』


『アッ、先ニ言ワレターッ!?』


「コール殿、一瞬ならば我一人で食い止めよう! オクノ殿達とともに、決めるのであるーっ!!」


 ジェーダイが吠える。

 よし、お前の心意気は無駄にしないぞ!


 俺も、フタマタと合体して力に満ちている。


「みんな、決めるぞ!!」


「おう!!」


 かくして、俺達最大、最後の連携が始まる。


『ペトロブレス!!』


 ダグ・ダムドが石のブレスを吐く。


『エアロスピン!!』


 ワース・ワッシャーが嵐を巻き起こす。


『アイシクルランス!!』


 ポー・ベアグルが氷柱の雨を落とす。


 そこに、皇帝ファイナルが技を合わせる。


「はやぶさ……キャンセル! その速度を乗せて、最速・彗星剣!!」


 なんだそれ!?

 だが、本当にはやぶさ斬りの速度で放たれる彗星剣。


「いっくぜえええ! トルネードスピーンッ!!」


 ミッタクの回転も今までで最大だ。

 とんでもない規模になった竜巻がメイオーに炸裂する。


『うおおおおおっ!? だがっ! だがこれで閃けそうだぞっ……!』


「させるか! 行くぞ、マキ!」


「うん、フロントくん!」


 いつの間に日向が!? 後ろでサムズ・アップしている、死にそうな顔のタカフミ。

 いい仕事しやがるなあ。


「エスプレイドッ!!」


「ラブラブッ!」


「ゼフォロォォォォォォォッスッ!!」


 エスプレイダーと日向が一体となり、メイオーに突貫だ!


『ヒャッハァァァァッ!! 神をバラバラにしてやるぜええ!! ダミアンチェンソーッ!!』


『ヤット三等兵呼ビヲ止メテクレマシタネッ』


 ダミアン軍団が変形したチェンソーが、メイオーに振り下ろされる!

 そしてイクサ。


「解放された。行くぞ……!! 乱れ雪月花……!!」


 イクサが走った。

 絶対不可避の三連撃がメイオーを襲う。


『ぬうおおおあああああああっっっ!!』


 強力無比な攻撃の連携に、上空へとかち上げられたメイオー。


 ピコーン!!

『メイオー・スペシャル』


『がはははははは!! ここから、俺の反撃があああああああっ』


「させねえって言ってんだろうがあっ!!」


 ピコーン!!

『ジャパニーズ・オーシャン・サイクロン・スープレックス』


 メイオーが放つ、今までの攻撃全部入り技を真っ向から受ける俺。

 その最中に、奴の体をガッチリとホールドする!


『おおっおおおおおおおっ!?』


 空中にて、メイオーの腕をクロスさせてホールドして持ち上げ、そのまま地面へと叩きつける!


『ペトエアアイシク彗星ルネードラブラブチェンソー雪月花サイクロンスープレックス』


『おおお……おおおおおおおおおっ!!』


 地面は粉砕され、巨大なクレーター状になっている。

 その中心に突き刺さったメイオーが、震える。


『わは……わはは……わはははははははは!! 凄いな! なんだ今のは!? 凄い技だったな! お前ら、凄いな!!』


 頭を引き抜き、メイオーが立ち上がる。

 俺達の間に緊張が走った。


 メイオーは頭から流血しつつ、だが、両手を広げ、天を仰いで笑っていた。


『はははははははははははは!! 存在し続けていれば、いい事があるものだ! まさか……まさか、こんな技を掛けられる事になるとはなあ……。いやあ……満足した』


『お兄様……』


『ハームラ。妹よ。兄は満ち足りたぞ。オクノ、新たなる英雄よ。オレの写し身よ』


 なぬ、写し身?


『ああ、オレの方がお前の写し身を依り代にしたんだった。頭を打って混乱してるな、ははは。後は任せたぞ。オレは今、何もかもやりきった。だからオレは消滅する。だが、この世界は平和になったわけじゃないぞ』


「どういうことだ?」


『混沌の裁定者のような連中は、あちこちにいる。世界を渡り、世界を食い潰す連中だ。そいつらから世界を守る役目を、お前に譲り渡そう』


 メイオーが手を差し出してきた。

 すっかり毒気が抜けて爽やかになっちまったな。


 俺はちょっとしんみりしながら、奴の手を握った。

 するとメイオー、ニンマリ笑う。


『ワハハハハ! 引っかかったな! そおれ、ホールドから引き寄せてのブレーンバスターだ!』


「ぎえーっ! 謀ったなメイオー!?」


 俺とメイオーは、ともに地面にぶっ倒れた。

 メイオーが空を仰ぎながら笑う。


『わっはっは、まあ、オレの最後のジョークと言うやつだ。最後はしんみり終わったららしくないだろうが! そして今、オレの残る力をお前に受け渡した。じゃあな、オクノ。任せたぞ』


「メイオー……って、言いたいことだけ言って消えやがった」


 そこにはもう、何も残ってはいなかった。

 俺達はついに、メイオーを倒したのである。


 戦闘終了だ!


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